2024年12月23日(月)

安保激変

2012年4月5日

 3月26-27日、韓国の首都ソウルで「核安全保障サミット(Nuclear Security Summit)」が開催された。ホスト国の韓国の李明博大統領、米国のオバマ大統領、中国の胡錦濤国家主席をはじめ、各国首脳が53名も出席する一大国際会議だった。

 そもそも、「核安全保障サミット」とは何か? 2009年、オバマ大統領は大統領就任後、外遊先のプラハで「米国は核無き世界の実現にコミットする」と高らかに宣言、全世界の核軍縮を支持する人々の期待を高めた。しかし、「核兵器ゼロの世界」は簡単に実現できるものではない。

 それどころか、核兵器不拡散条約(NPT)が署名された時の核保有国はたったの5カ国だったが、1990年代にインド、パキスタン両国が核実験をして実質的な核保有国に仲間入りした。加えて北朝鮮、イランの核兵器プログラム疑惑が国際社会を悩ませるなど、核兵器は拡散の一途を辿っている。さらに21世紀に入ってからは9・11を首謀したアル・カーイダのような国際テロ組織の手に核兵器が渡る危険性まで囁かれるようになった。つまり、核兵器拡散のリスクは増大し続ける一方だ。

サミットはオバマの呼びかけで実現

 このような状況の中、オバマ政権は「核兵器テロ(nuclear terrorism)」を米国の安全を脅かす最大要因の一つとして位置づけ、これを未然に防ぐためには核物質や核兵器製造技術をより厳格に管理する必要があると決めた。しかし、核物質の国際的な管理制度を作るためには、世界各国の合意が必要になる。そこでオバマ大統領の呼びかけにより、10年4月、第1回核安全保障サミットがワシントンDCで開催された。

 第1回会合は、世界各国の首脳47名が集う大会議となり、小職のようなワシントンDCの住人は皆、交通渋滞と道路封鎖に悩まされた。会合では核物質や核ミサイル製造のための技術をいかに管理し、テロリストや犯罪組織の手に渡らないように各国が規制を強化することができるかについて議論され、国内規制強化などの努力を継続する、ということが決まった。3月にソウルで開催された第2回会合は、第1回会合からの議論を継続し、各国が過去2年間の努力について報告するために開かれたものだ。

ほとんど報道されない日本
希薄な存在感

 だが、この会合での日本の存在感は希薄だった。アメリカでは、オバマ大統領や胡錦濤主席と握手をする李大統領の映像が繰り返しCNNニュースなどで流れる一方で、日本については、誰が出席したのかすら話題に上らなかった。新聞でも、北朝鮮問題について中国やロシアとオバマ大統領が会談した、という報道や、会合前に韓国入りしたオバマ大統領が非武装地帯を視察したことなどは写真入りで報じられていたが、日本に関する言及はほとんど見られなかった。


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