Wedge REPORT

2019年12月3日

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 インスペクションを数多く実施してきたさくら事務所(東京都渋谷区)では、費用は戸建ての場合6万円、マンションは5万円程度で診断する。戸建ての場合約3時間、マンションは2時間かけ、外壁、構造体と雨漏りなどを重点的に調査する。室内では水回りなどもしっかりチェックする。レーザーで壁などの水平具合を確認したり、屋根裏で雨漏りの点検や、床下から水たまりやカビ臭を確認したり、詳細検査では基礎や土台の不具合も確認する。

さくら事務所による外壁のインスペクション実施の様子
(SAKURAJIMUSYO)

 さくら事務所会長の長嶋修氏は、「実施件数は年間2500件くらいで、毎年15~20%は増えており、手応えは感じている」と語るが、「一番のポイントになるのは、買い手が何を重視するか。『10年くらい住めれば良い』と言う人と、『一生の住まいに』と考えている人とではチェックポイントが違ってくる。インスペクションをする前に、買い手と調査者がきちんとコミュニケーションをとることが大事であり、売り手がインスペクションをする意味はあまりない」という。

 国交省は昨年4月から、宅建業者に対し、インスペクション制度を売り主や買い主に紹介することなどを義務付けた。制度の実施自体は義務化されていない。長嶋氏によると、「建物修理に詳しくない宅建士が制度の説明を行うことが多く、全体としてはあまり機能していないのでは」とみる。

住宅局長インタビュー:政策的には新築と中古は”イーブン”に
住宅政策の舵取りを行う国土交通省の眞鍋純住宅局長に、中古活性についてどう政策を推進していくか聞いた。

編集部(以下、──)中古市場が活性化していると考えるか。
眞鍋:
マンションは全国的に取引が伸びているが、戸建て住宅はマンションほどの伸びは見せていない。中古の立地、価格、品質など情報がきちんと開示され提供されれば、消費者が安心して買える環境が熟し市場は伸びていくのでは。不十分なところがあれば行政として対応したい。

──中古の質について消費者には不安がある。その点については。
眞鍋:重要なのは住宅に保険を掛ける仕組みを広げることだ。新築は義務化されているが、中古を買う際にも瑕疵担保保険に入っておけば、建物に不具合があっても安心して購入できる。保険に入るためにはインスペクションが必要で、昨年4月から宅建業者による消費者への調査結果の説明などを義務化したが、まだ定着したとは言えない。

──インスペクションを義務付けたらどうか。
眞鍋:この状況で売り手に義務付けるのは時期尚早で、買い手への義務化も難しい。昨年4月から耐震性の確保やインスペクション制度をパッケージにした「安心R住宅」制度を始めたが、流通件数はまだ1300戸ほどでブレイクしていない。

──住宅の総量規制が必要では。
眞鍋:消費者が求める住宅を得るために選択の幅が必要で、ある程度は空室の中古は必要。災害時にも一時的に空室を活用できる。立地や性能、品質が劣後するにもかかわらず、中古が多くあるから新築が必要ないとは言えない。空き家が多いのは承知しているが、だからといって新築を規制すべきだということにはならない。

──政策が新築優遇なのでは。
眞鍋:国交省では20年ほど前から中古流通やリフォーム促進の政策を広げてきており、税制、補助金のメニューは新築よりも多いくらいで、政策的にはイーブン(同じ)になってきている。減税対象となる中古の築年数(マンション25年以内、木造は20年以内)条件の緩和を希望する声があることは承知している。制度を用意してもどれくらい使われているかは別問題なので、使い勝手の悪い面や不足点があれば意見を取り入れ考えていく。

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