2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2019年12月3日

不動産情報システムはなぜ消費者に「開放」されないのか
不動産流通標準情報システム「レインズ」には、物件の正確な住所、過去の成約価格の推移などが示される。物件を売却する際の情報登録や、購入の際の検索は宅建免許を持つ不動産業者が行う。なぜ一般の利用者による閲覧や検索ができないのか。国交省不動産業課の担当者に聞いた。

編集部(以下、──)消費者がレインズを見られないのはなぜか。公開すれば、民間の不動産サイトを比較するコストが削れるのではないか。
国交省担当者:1つの理由として個人情報の問題がある。正確な住所までわかるので、どの家がどの価格で売買されたかがわかる。隣の家に住んでいた人がいくらで家を売った、という情報を開示するのは難しい。また現在は民間のサイトにおいて、価格調査の精度が高まり、レインズには記載されていない、例えばハザードマップの情報なども掲載されるなどサービスが充実してきている。そういったなかで、国がコストをかけてシステムを一新する必要があるかという話だ。お店や旅行商品などの比較サイトが充実しているなか、不動産に関してだけ国が介入することは難しい。

──売り主が不動産業者を指定して売却の手続きをする場合、不動産業者は物件情報を期間内にレインズへ登録することが義務付けられている。登録せずに自分で買い手を見つける、または他者からの問い合わせに「契約予定あり」などと偽って、自ら買い手を見つけ双方から仲介料を取るといった「囲い込み」が横行しているという。レインズが機能していないのでは。
国交省担当者:16年より売り主がレインズ上で物件の取引状況を確認できるように改善された。これによって、不動産会社が契約状況について偽ったとしても、売り主が直接不動産会社に相違ないか確認できる。今後新たな問題が発生する可能性はあるが、現時点での対応はしていると考える。

──買い手である一般消費者への公開や、機能の充実などを国主導では行えないのか。
国交省担当者:レインズは不動産会社の加入する、全国4つの公益法人によって運営されており、機能の調整などもそこでの判断が必要となる。法律の改正など必要に応じた場合以外は、国が直接的に介入するものではない。
 
現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「新築」という呪縛  日本に中古は根付くのか
砂原庸介、中川雅之、中西 享、編集部
PART 1  中古活性化を阻むしがらみ  「脱新築時代」は来るか?
PART 2      「好み」だけではなかった 日本人が”新築好き”になった理由
PART 3      米国の中古取引はなぜ活発なのか? 情報公開にこそカギがある
COLUMN  ゴースト化した「リゾートマンション」の行方
PART 4      中古活性化に必要な「情報透明化」と「価値再生」

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2019年12月号より

 

 

 

 

 

 
 

 

 
 


新着記事

»もっと見る