2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2012年4月17日

 とくに韓国人の多いバージニア州では、今年1月、州で使用する教科書に「東海併記」を求める法案が州議会へ提出されました。結果は8対7で否決されたものの、たった一票差まで詰め寄られたのです。韓国としては、まず州の教科書に「東海併記」を採用させ、その実績をもって4月のIHOの総会に望む狙いがあったものと思われます。

フランスの百科事典、
オーストリアの教科書も「併記」を採用

──しかし、一票差とはいえ「否決」されたわけですから、IHOの総会で「東海併記」が採用される可能性は低いのではないでしょうか。

下條教授 : 必ずしも低いとは言えません。2月20日に韓国各紙が報じたところでは、フランスの大手出版社ラルースの発行する百科辞典で、日本海と東海の「併記」が採用されました。韓国は、東海併記に賛同する国を拡大するため、定期的に世界各地で「東海地名と海の名称に関する国際セミナー」を開いてきましたが、今年3月にもベルギーのブリュッセルで第18回目を行っています。そのセミナーの場で、オーストリアの教科書にも「併記」が採用されることになったと朝鮮日報が報じています。*2

*2:朝鮮日報は3月9日、オーストリア学術院のイ・ジョルデ・ハウスナー教授が、「オーストリアの学校教材地名表記勧告改訂版に、"東海/日本海"と併記するという内容が含められた」と発表したことを報じた。また、ハウスナー教授は「オーストリア学術院は同じ言語を使用するドイツにも、“東海/日本海”の併記を要請しており、関係者がすでに検討を開始している」とも発表している。

 そもそも、2月末にIHOが提出した最終報告書には結論が明記されず、「総会に持ち越す」とされているのです。こうしたIHOの総会に照準を合わせた韓国側の動きが、果たしてどのような結果を生むか、日本にとって予断を許さない状況です。

 また、たとえ今回の総会で「併記」が認められなかったとしても、韓国側のプロパガンダは続いていくでしょうから、少しずつ確実に「東海併記」の流れは加速していき、日本は孤立していきます。韓国政府の調査によれば、2000年時点で2.8%にしか過ぎなかった東海併記が、2010年には30%近くまで伸びているのです。韓国側では「東海の呼称は朝鮮半島で2000年前から使われており、日本の植民統治下にあった1929年、国際水路局が編纂した『大洋と海の境界』に東海を載せることができなかった」としていますが、その主張には根拠がありません。問題はそういった事実無根の主張を鵜呑みにする国々があることです。

7万人の中高生を集めた韓国の「VANK」
サイバーで「東海併記」を世界に発信

──そのような韓国側の動きに対し、日本はどのような対策を講じるべきでしょうか。

下條教授 : いま日本が講じている対策は、世界中の古地図を調べ、「東海表記より日本海表記のほうが多い」と数を競っているだけです。このやり方では、日本海が紛争地帯であることを世界に向けてアピールしていることになり、併記を奨励しているようなものです。韓国側の主張には歴史的な根拠がないわけですから、日本はモナコで開催されるIHOの総会で、厳然とした歴史的事実を明らかにし、加盟国を説得することが大事です。


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