前向きに読み解く経済の裏側

2019年12月16日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

雇い主の多くは厚生年金に入って欲しくないのに

 中堅企業にとっては、雇っているパートが厚生年金に加入すると、保険料の半分を負担させられますから、原則として加入して欲しくないはずです。そうなると、企業もパートも加入を望んでいないのに、加入を強制されるというケースが多数生じることになります。

 「企業とパートが合意した場合のみ厚生年金に加入する」という制度を採用すれば、そうした問題は生じないのに。

 それでは、今次改正をしなければ良いかというと、それでは改正を望んでいる人が失望することになります。

 「週に20時間しか働けないけれども厚生年金に加入したい」というパートも大勢います。そうしたパートの多くは、現在は大企業で働いているのでしょうが、「労働力不足なのだから、そうした人でも雇いたい」と考えている中堅企業もあるでしょう。

 そうした企業は、制度が改正されることを望んでいるはずです。政府の改正案が上記のように困った人を生むとすれば、やはり「雇い主と企業が合意すれば厚生年金に加入できる」という制度が望ましいでしょう。そうした制度でも、後者の企業は望んだようにパートを雇えるからです。

年金財政へのプラス面は一時的だから考慮すべきではない

 政府は、「中堅企業のパート労働者と使用者が年金保険料を支払うことによって年金財政が好転する」と考えているようですが、それは重要なことではありません。

 それは、新しく厚生年金に加入したパート労働者が老後に受け取る厚生年金のことも考えると、年金財政が好転したとは言い難いからです。

 公的年金が賦課方式であることを考えれば、今の現役世代が支払う保険料が増えることで今の高齢者は潤うかもしれませんが、今の現役世代が高齢者になった時には次世代に年金保険料を払わせて年金を受け取るわけですから、それこそ「将来世代に負担を負わせる制度」だと言えるでしょう。

 政府の年金に関する試算のタイムスパンが数十年先までなので、事態が好転するように見えますが、それは一時的なことであって、将来の年金財政が好転したわけではなく、長い時間軸で考えれば何も改善しないのです。

  
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