2022年8月14日(日)

WEDGE REPORT

2020年1月15日

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川端由美 (かわばた・ゆみ)

ジャーナリスト

1971年生まれ。大学院 工学専攻 修士課程修了。1995年住友電工にて、カーエレクトロニクスやタイヤの研究にたずさわる。1997年、二玄社『NAVI』編集部に編集記者として転職。2004年からフリーランスの自動車ジャーナリストとなる自動車の新技術と環境問題を中心に取材活動を行なう。エンジニア、女性、自動車ジャーナリストといったハイブリッドな視点でリポートを展開する。国土交通省・独法評価委員会委員、環境省・有識者委員ほか。

 元々がドイツの国民車構想から生まれた自動車メーカーであり、近年も地元の州における雇用を確保する要素が強い。予定の生産台数に基づいて投資を行うという、計画生産を敷いている。

 そのVWが大胆なEV生産へ転換する理由は何か。第一に、「CASE」にあらわされる通り、自動車産業のパラダイムシフトが起こる中で、官民共同でドイツ自動車業界の雇用を確保していく狙いがある。

 独フラウンホーファー研究機構の調査によれば、EVへの移行により、ドイツ国内で7万5000人の雇用が失われるリスクがある(30年までに自動車全体のうち25%がEV、15%がハイブリッド車、60%がガソリン・ディーゼル車となる推計に基づく)。

 ツヴィッカウ工場の人事担当者も「EVになると、30%の工程が減る」「労働力は10%減らせる」と語った。EVでは、内燃機関が電気モーターになることで部品点数が減る。電気系の部品はモジュール化しているものが多いため、3万点あった部品が数え方によっては、5000点にもなるとも言われる。すそ野産業への雇用の影響は大きい。

 そこで10年、ドイツ自動車工業会は「EVのナショナルプラットフォーム構想」をスタートした。自動車メーカーや充電装置関連の企業はもとより、電力会社も含めて電動化時代における自動車産業の枠組みの構築を図った。

 そうした流れの中で、将来的に自動車需要がEVに転換したとき、”国策”メーカーであるVWが後れを取ってはならない。メルケルは「ドイツ政府は一般のドライバーがEVを手にできるような補助金や施策を用意する方針です」と語った。官民で自国市場でのEV需要の立ち上げに動いている。

欧州域内に電池産業を
誘致育成する理由

CATLはドイツで初の海外工場の建設を開始した
(PICTURE ALLIANCE/GETTYIMAGES )

 VWはEV生産のためのリチウムイオン電池の供給契約を、同分野で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と結んでおり、CATLは、中国国外では初の生産工場の建設を、ツヴィッカウ工場に近いエリアで開始した。これについて名古屋大学客員准教授の野辺継男氏は「欧州は雇用の確保という意味でも電池産業を域内に誘致育成している」と指摘する。欧州企業にかぎらず、現地に工場を誘致できれば、雇用の確保につながる。

 欧州自動車メーカーのおひざ元の欧州市場を守る動きも起きている。欧州では次々と厳しい燃費規制が敷かれているが、これについて独ローランドベルガーのシニアパートナーであるトーマス・シュリック氏は「非関税障壁になる可能性がある」と語る。

 EUの21年の燃費規制では、欧州で販売するメーカー平均で走行1キロメートルあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を95グラム以下に抑える必要がある。加えて今後は、生産からリサイクルまでを評価するライフサイクル評価(LCA)でCO2排出量を見られる可能性がある。こうした環境への対応を求めることで、欧州域外からのEVの流入を防ごうとしている。

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