米カリフォルニア州は米国の新車登録台数の11.7%を占める、まさに自動車大国だ。販売台数で見ると2018年にカリフォルニアで販売された車は89万6007台で、2位のフロリダ51万1530台を大幅に上回る。
しかしこの車の多さゆえに、カリフォルニアは常に大気汚染と戦ってきた州でもある。同州が最初のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル、無公害車)法案を作成したのは1990年に遡る。当時はまだテスラのようなEVメーカーもない中で、自動車メーカーに対し「出来る限り排気ガスの少ない車を州内で販売する」努力を促すものだった。内容も1998年までに州内で販売する車の2%をZEVにする、という緩やかなもの。
その後この目標数字は2001年に5%、03年には10%に引き上げられた。その間にもPZEVという、プラグインハイブリッドや超低公害車両にもクレジットを与える、などの変更が行われてきた。
法案は時期尚早だったこともあり、当初から自動車メーカーの反発にあい、数々の訴訟が起こされた。また連邦政府も「車の排気ガス基準を定める権限を持つのは連邦政府のみ」という立場からカリフォルニアと争ってきた。
しかし逆風の中でも同州のクリーンな空気を求める動きは続き、2013年には当時のブラウン知事のもと、「2025年までに同州内に150万台のZEVを導入する」というアクションプランが宣言され、さらに昨年には欧州での動きに呼応して2040年以降同州内でのガソリンエンジン車両の販売禁止という法案が提言されるなど、着々と進んでいる。
このカリフォルニアの動きに米北東部を中心とする州が追随し、独自の環境基準を打ち立ててきたが、最大の反発となったのがトランプ政権の誕生だ。地球温暖化は嘘、と言い切り、それまでの連邦政府による排気ガス基準を緩める、という暴挙に出た大統領は、カリフォルニアの政策とは真っ向から衝突した。
カリフォルニア対トランプ政権は移民政策その他でも反発しあい、大統領が「政府による自治体助成金を廃止する」と脅すほどの抗争にも発展したが、特に排気ガス問題についての論争は現在も継続中だ。
ホンダ、BMWはカリフォルニア
トヨタ、GMはトランプ
これについて、自動車メーカーも慌ただしい動きを見せている。まず今年7月、フォード、ホンダ、BMW、フォルクスワーゲンは「カリフォルニアの動きに賛同する」という声明を出した。いずれにせよ世界の潮流はEVに流れており、これまで排気ガス削減に努力を行ってきたため、このままカリフォルニア州のZEVの進行に歩調を合わせる、という考え方からだ。
しかし今年10月、GM、トヨタ、現代、フィアットクライスラーなどはトランプ政権側につくことを表明した。カリフォルニアと22の州は9月にトランプ政権の排気ガス規制の逆行を阻止する訴訟を起こしたが、これら自動車メーカーは訴訟に際して政権を支持する、という。
環境保護団体や民主党からの非難を覚悟の上、さらに来年の大統領選挙で民主党が勝利した場合、オバマ政権時代のより厳しい排気ガス規制に戻される可能性も理解した上で、なぜ自動車メーカーの一部はトランプ政権のサポートに回ったのか。
民主党で環境・公共事業委員会に属するトム・カーパー上院議員は今回の自動車メーカーの動きについて「カリフォルニアと4つの自動車メーカーが指し示した責任ある道筋、我々をよりクリーンで代替燃料車両を持つ未来へ導くものに反し、今回の複数の自動車メーカーは行き止まりの道を選んだ」と厳しい言葉で批判した。