ロサンゼルス国際空港(LAX)が今年10月29日より、これまでターミナルの前に乗り場を設けていたウーバーやリフトなどのライドシェアサービスの空港内への乗り入れを禁止する、と発表した。これにあおりを受ける形で一般のタクシーの乗り入れも禁止となる。
今後LAXに到着し、タクシーやライドサービスを必要とする乗客は、ターミナル前からシャトルバスに乗り、指定されたLAX-itと呼ばれるパーキングまで移動、そこからライドシェアやタクシーなどに乗り込むことになる。
この背後にあるのは全米でも最悪と言われる同空港の混雑だ。LAXは大都市には珍しく、市街地の中に位置している。しかし、それがゆえに拡張が困難で、増え続ける乗客に対応しきれていない。同空港の利用者数は2010年には5900万人だったが、18年には8750万人にまで増加した。乗客の流れをスムーズにするためにターミナル改装などが行われたが、そもそもターミナルに到達するのが一苦労、というのが現状だ。
LAXはU字型に各社のターミナルが1から7まで配置され、その内側に車道、中央に駐車場、という構造になっている。車道には駐車場を利用する一般客、送迎車両、さらにレンタカーやホテルなどのシャトルバス、長距離バス、ライドシェアにタクシーが乗り入れ、常に大混雑の状態だ。ピーク時にはこのU字型の道を一周するのに一時間近くかかることも珍しくない。
JDパワーが行った顧客満足度調査ではLAXは全米の空港で下から2番目であり、多くの乗客が改善を求めている。さらにロサンゼルスは2028年の五輪開催地でもある。世界から人々が集まる玄関口である空港整備は緊急の課題なのだ。
元々LAXでは大規模な改善工事を進行させており、計画ではメトロと呼ばれる列車を空港近くまで延長(現在は空港駅からシャトルバスで15分程度)、その駅を中心にレンタカー会社、駐車場、タクシーやバス乗り場などを配置し、そのセンターから空港ターミナルまでを巨大な動く歩道のようなものでつなぐ、となっている。つまり各ターミナルから降り立った人々は、全ていったん空港の外に出て、そこからさまざまな方法で移動することになる。これにはウーバーが計画している「空飛ぶタクシー」も含まれる。
今回のライドシェアとタクシーの乗り入れ禁止はこの改革案を前倒しした形ではあるのだが、シャトルバスでの移動で時間がかかることもあり、人々の反応は賛否両論だ。空港の混雑が改善されるのは歓迎、という意見もあれば、ライドシェアを利用するのが不便になる、という不満の声もある。
もちろん乗客の不満に対応するため、LAXではこのシャトルバス専用レーンを設け、ピーク時には3-5分間隔でシャトルを走らせる、としている。LAX-itにはフードトラックやトイレなどが設置され、ライドシェアの車を待つ間も乗客が心地よく過ごせるアメニティが用意される予定だという。