メーカーも苦しい選択
しかし自動車メーカー側には大企業としての苦しい選択があった、と指摘する声もある。そもそも自動車のように規制の多い産業は連邦政府からの許認など、さまざまなつながりを持たざるを得ない。連邦政府の指針に背くことで、大きな罰則を科される可能性もある。
事実、カリフォルニアに同調した4つのメーカーには司法省から「連邦アンチトラスト法に抵触する可能性がある」という書簡が送られたという。国の中、そしてメーカーの中に2つの異なる基準が存在することを、連邦政府は認めない、という強い姿勢の表れだ。
問題になっているトランプ政権の逆行だが、具体的には「2020年の排気ガス規制値を2026年まで同基準に保つ」というものだ。オバマ政権下では毎年5%の排気ガス削減を達成し、2020年にはメーカー平均の車の燃費水準を37mpg、2026年には46.7mpgにまで向上させる、とされていた。つまりトランプ政権下ではこの37mpgが26年まで据え置きとなる。
自動車メーカーの本音としては、この両者の中間、つまり毎年5%の燃費向上は大変だが、せめて1.5%程度に留める、という妥協案が制定されることだ、という指摘もある。世論としての環境保護には合わせたいが、車の販売価格をそれほど上げずに達成できる目標も必要、という考え方だ。実際GMはカリフォルニアのZEV法案に対し「実現するには研究開発費などのコストがかさみ、それが販売価格に跳ね返って車の価格は1台あたり5000ドル程度高くなる可能性がある」と指摘していた。
現時点でZEVを満たす車両は燃料電池によるEVもしくはプラグインのEVに限られる。そのためにメーカー各社はEV導入に積極的ではあるが、チャージステーションなどのインフラがそこまで進行していない現状もあり、カリフォルニアが掲げる150万台導入はまだ遠い目標だ。少しずつそこに近づくための努力はなされているが、政治に左右される現状に最も戸惑いを感じているのは自動車メーカー自身なのかもしれない。
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