2022年12月5日(月)

中東を読み解く

2020年1月6日

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司令官とハメネイ師の交信

 現地の緊張が高まる一方で、トランプ大統領の司令官抹殺命令への疑問も広がっている。ニューヨーク・タイムズによると、大統領は2日夜、国防総省から提示された攻撃オプションのうち、ソレイマニ司令官を殺害するという最も過激なものを選んだ。国防総省幹部らは大統領がよもやこのオプションを選ぶとは考えておらず、驚愕したという。

 トランプ政権の一部からも水面下で、ソレイマニ司令官が米国への攻撃を切迫させていたというホワイトハウスの殺害の理由に対し、「差し迫ってはいなかった」と懐疑的な声が出ている。当局者の1人はこれについて、米国が司令官とイラン最高指導者ハメネイ師との間で交わされた通信内容を探知していたという極秘情報を同紙に明らかにしている。

 この交信によると、ハメネイ師はソレイマニ司令官に対し、殺害の1週間前まで米攻撃のいかなる承認も与えておらず、さらに協議を行うためテヘランに来るよう指示していたという。司令官が最高指導者の許可なく、対米攻撃を行うことは考えにくい。この報道が事実とすれば、司令官殺害の正当性に疑義が生まれてこよう。

 政権内で対イラン強硬論を最も主張していたのはペンス副大統領とポンペオ国務長官だった。とりわけペンス副大統領は強硬路線を主導する会議などを後押ししたが、トランプ氏の決断にどう影響を与えたのかは不明。

 ホワイトハウスは米議会に対し、司令官殺害が戦争権限法に基づく決定だったとする通告を正式に行ったが、議会民主党は強い疑問を投げ掛けており、大統領の弾劾裁判の行方も相まって政治対立の新たな要因になるのは避けられない。イランに対して強硬姿勢を示すことで、再選を有利に運ぼうとしたトランプ大統領の思惑のほころびも見え始めてきそうだ。

  
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