一部茶業者の“人任せの姿勢”が、大きな痛手を生むことになる。国による9月2日の抜き打ち検査で、若芽・早摘みのお茶5検体中3検体でクロが判明してしまうのだ。もし横田さんのようなスタンスを茶業者全員が持っていれば、市販商品から検出される事態は避けられたかもしれない。
「茶業者全員で一丸となっていれば…」
抜き打ち検査を受けて、埼玉県は同月14日に全銘柄の出荷停止を要請し、若芽・早摘み茶の検査に入る。その間、横田さんら狭山茶茶業協会の一部所属メンバー間では、早晩、若芽・早摘み茶以外のお茶の検査も行われるだろうという見解のもと、「今、生産者は何をすべきか」を自ら問いただし、「抜き打ち検査によるクロ」という事実を省みながら、これからの茶業経営について、栽培管理等の検討を日夜重ねていった。
自分たちの販売しているお茶の数値は確実に把握し、問題があればすぐに対応できる体制を整えていた。県の全検査で暫定規制値を超えるお茶が出れば、それは当然ニュースとなり、さらなるダメージが狭山茶を襲うことになる。それを避けるための動きだった。
あわせて横田さんらは、県の検査を待たず、暫定規制値よりもさらに厳しい線引きをして、自分たちでも販売するお茶の全銘柄について自主検査を行っていった。「費用は80万円程かかりました。でも、それをする必要があった」と横田さん。
足を引っ張った行政の対応
しかし、一部の茶業者は埼玉県による「若芽・早摘みのお茶に多く含まれる」との見解を鵜呑みにし、それ以外のお茶に注意の目を配ることを怠った。結果として、県の検査で若芽・早摘みのお茶以外でも、暫定規制値を超えるお茶が検出されてしまう。かくして狭山茶を取り巻く状況はさらに厳しさを増していった。
「自主検査をした人の結果を見て『同じ地域で、同じ品種のお茶を同じ製造方法で作っているから大丈夫』と判断し何もせず、結局県の検査に引っ掛かった方もいました。狭山茶の茶業者全員が一丸となって立ち向かっていれば、いまの状況とは違うものになっていたのではないかと、私は思います」
全員一丸という点では、埼玉県も足を引っ張った。冒頭で触れたように対応が甘く、すべてが後手に回った。その象徴的な例が、昨年9月の国の抜き打ち検査の結果について、多くの茶業者はマスコミからの連絡で知ったという事実だ。これでは、足並みが揃うはずもない。前述した一部茶業者の“人任せの姿勢”も、こうした県の対応の遅さが起因となっている側面もある。「分からないから動きようがない」という論理だ。
新茶シーズンに向けて徹底するルール作り
県の対応は今年、変わったのか。