いま、狭山茶は新茶のシーズンを間近に控えており、茶業者は「平成24年産のお茶」をいかに売るかに注力している。営業被害を受けた狭山茶の生産者らで作る団体「狭山茶振興対策協議会」では、狭山茶の信頼回復のため「平成24年産の新茶ができたら、平成23年産のお茶は絶対流通させない」「来年度以降に放射性セシウムが出ないよう徹底した茶園管理を行う」「ほうじ茶の場合、前年の茶葉を炒ることが多いが、流通させるお茶については平成24年産、もしくは平成22年産の茶葉を使用する」といった具合に、平成23年産のお茶を流通させないルールを早々に決めた。
こうしたなか県は、後手後手に回った昨年の反省を踏まえ、基準値を超えるものは絶対流通させない方針を決めた。この4月から暫定規制値は飲用茶において1キログラムあたり10ベクレルとなり、それを受けて県は「栽培、加工、流通・販売の3段階のチェック」を方針とし、「栽培段階の生葉で検査を実施」「流通前の荒茶で、県内全工場で1検体以上の検査を実施」「市場に出回った製茶を、抜き打ちでの検査を実施」といった検査体制とした。
消費者の信頼を勝ち取るために
しかし、後手に回っていることもある。昨年同様の「検査済みシール」を配布するのか否かについては、まだアナウンスされていないのだ。
「検査済みシールを見て『安全だ』と判断し、購入に至るお客様は多くいらっしゃいました。それに狭山茶は贈答品の側面もありますので、シールの存在は重要です」
この言葉を読めば、検査済みシールの存在がいかに重要であるかは一目瞭然だ。それだけに、昨年の反省を踏まえての県の対応はまだ甘いと、私は感じる。
こうした状況下、売上げ回復の原動力となったものがある。一般市民の力添えだ。
横田さんは今回の出来事を通じて、茶業者が自ら「狭山茶は安全です」とアピールしても、それほどの効果は得られないことを痛感したという。手前味噌であるため、消費者の信頼を勝ち取ることは難しいのだ。
「自分たちの役割は美味しいお茶を作り、安全である根拠となる数値を示し続けることしかないのです。それに徹していると、少しずつ地元の方々が認めてくれて、率先して、信頼回復キャンペーンなどを行ってくれました。それが売上げを6割まで戻せた大きな要因だと実感しています」
県は平成24年産のお茶に対し「栽培、加工、流通・販売の3段階のチェック」というルール決めを行ったことは前述した。国が求める「市町村ごとに3検体以上」よりも厳しい検査と言えるが、横田さんは「それだけでは足りない。自分たちの全銘柄の自主検査は、もちろん今年も行います」と話す。
この姿勢を一人でも多くの茶業者が共有し、行政がしっかりとけん引していくこと――、それ以外に狭山茶のブランド回復を早く実現するカギはありえないと、私は考える。
(写真:筆者撮影)
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