2024年11月22日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2020年3月9日

次は銀行の取り付け騒ぎかもしれない

 次に問題を引き起こすのが「物が足りなくなる」という噂とは限りません。「あの銀行が倒産しそうだ」という噂で人々が預金の引き出しに殺到し、本当に銀行が倒産してしまうという「取り付け騒ぎ」が起きるかもしれません。

 満員の劇場で「火事だ」と誰かが叫び、全員が出口に向かって走って行くという惨劇が起きるかもしれません。

 最も可能性が高いのは「株価が暴落するらしい」という噂を聞いた人々が株の売り注文を出すので本当に株価が暴落する、といった事態でしょう。それなら株式市場で比較的頻繁に生じていますし(笑)。

 こうした事態は、一度発生してしまうと収拾が困難です。人々が合理的に行動しているわけですから、「冷静に」と呼びかけても人々の行動を変える事は容易ではありませんから。

 銀行なら健全経営に努めて噂が流れないようにすること、劇場なら非常口を多めに作って観客に安心感を与えること、等ができるでしょうし、株価の暴落は実体経済が健全ならば遠からず元に戻るでしょうから株主も売り急ぐ必要を感じなくなるでしょう。

 それに比べると、「物が足りない」という噂に備えることは容易ではないかもしれません。ということは、再び何かが足りないという噂が流れる可能性があるということです。

 本稿は、決して読者を不安に感じさせたり「次に噂が流れたら急いで大量に買うように」と促したりするものではありません。単に世の中にはそういうメカニズムが働きかねないのだ、ということをお示ししただけです。

 ちなみに、「人々が合理的に行動すると皆が酷い目に遭う」ことを「合成の誤謬」と呼びます。難しい言葉ですが、知っているとチョッと格好良いですよ(笑)。

  
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