大型クルーズ船の教訓 国際間の取り決め必要
――クルーズ船の反省を踏まえて現状の対策は
山本 ごく最近ナイル川クルーズでも新型コロナウイルスに感染した日本人が報道されましたね。さらに米国では、同じ会社の別のクルーズ船でやはり新型コロナの感染が判明しました。しかし今回は、すぐ近くのオークランドの港に緊急に着岸したあと、乗客たちを複数の米軍基地に送り、そこで検疫をやったということのようです。これは横浜での失敗に学んだのだと思います。
これからますます、クルーズ船での観光が盛んになるはずだったのでしょうが、これら一連の事件はこのムードに一気に冷や水を浴びせることになりました。航海の途中でも重症に至る感染症の気配があれば船長には即刻、それを中止して近くの港に寄港する決断力が必要だし、到着後ただちに乗客も乗員も汚染した船から引き離す必要があるということが教訓です。多国籍な人が乗船し、世界各地を巡るツアーはこれからますます盛んになっていくと思われます。
しかし、今回のような感染症の制御については、一国だけの監督や指導に任せて良いのでしょうか。乗客や乗員の貴重な生命を守るためにも国際間の新たな取り決めが必要と思われます。
ウイルスを正しく知れば怖くない
――ウイルス学者として今回の新型コロナウイルスの蔓延をどうみますか
山本 私はSARSウイルス、エイズウイルスなど、さまざまな怖いウイルスを直接実験室で扱ってきましたが、いまだにそれらに感染していませんし、怖くもありません。敵の恐ろしさや弱点がよく判るからです。新型コロナのような空気中を漂うごく小さい飛沫から感染するウイルスは、その感染様式がインフルエンザによく似ています。
皆さんもこれがインフルエンザであればここまで恐れないでしょう。基本は、接触と飛沫に注意することです。最近、WHOなどはよくSocial distancingという表現で、他人との距離を取ることの重要性を強調しています。新型コロナウイルスを過度に恐れることなく、これに感染しないようにするにはどうしたらよいのか、またどういう行動が感染につながるのか、について一人ひとりがよく考え、実践することが大切だと思います。