仮想空間で潜在脳を慣らす
潜在脳を鍛える。つまり、〝慣れ〟るにはどうするのか?そのためのツールとして活用するのがVR(仮想現実)技術だ。
VRはゴーグル型の「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」を装着すれば、仮想現実を体験できるもので、東京五輪に向けては、ソフトボール女子日本代表が練習に取り入れている。
VR用の映像は、実際の対戦が予想される投手の投球モーションやボールの軌跡の分析結果を三次元に再現したCG映像にする。打者はHMDを装着し、そこで再生される映像を通じてライバル投手の投球を仮想体験できるのである。三次元空間では360度の球場映像が出現し、打席に入った感覚になる。そこへ正面のマウンドに立つ投手が投げ込み、実戦さながらの臨場感溢(あふ)れる〝勝負〟ができるのだ。
「こうしてVRで学習量を積み、脳への負荷をかけて潜在脳を鍛えて慣れる。慣れることで余計な不安も払拭(ふっしよく)しメンタル面にも好影響をもたらす」と柏野氏は語る。
意外にも、ボクシングや卓球のトップ選手の動体視力が高いとは限らないという。「モンスター」の異名をとるボクシングの井上尚弥は対戦相手を研究する際、こうなってああなってここはこうして・・・と、あらかじめ綿密にシミュレーションし、綿密に相手を見極め、いかに多くの定石を身体に覚えさせるか。リング上で潜在脳が働き、自然な動きとなって相手をマットに沈めてきたというのだ。卓球にしても、一打一打いちいち考えながら打ったり拾ったりしていては反応しきれるものではなく、鍛え上げられた潜在脳が数手先まで読みながら身体を動かしている。
VR技術は卓球やボクシング、eスポーツにまで応用できる。短期決戦でも初めての相手ではないように戦える技術が開発され続けている。
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