五輪を彩るテクノロジー

2020年3月20日

»著者プロフィール
閉じる

黒井克行 (くろい・かつゆき)

ノンフィクション作家

1958年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家。人物ドキュメントやスポーツ全般にわたって執筆活動を展開。主な著書に『テンカウント』(幻冬舎文庫)、『男の引き際』(新潮新書)、『高橋尚子 夢はきっとかなう』(学研)、『日野原新老人野球団』(幻冬舎)、『指導者の条件』(新潮新書)、『ふるさと創生―北海道上士幌町のキセキ』(木楽舎)他多数。

仮想空間で潜在脳を慣らす

 潜在脳を鍛える。つまり、〝慣れ〟るにはどうするのか?そのためのツールとして活用するのがVR(仮想現実)技術だ。

 VRはゴーグル型の「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」を装着すれば、仮想現実を体験できるもので、東京五輪に向けては、ソフトボール女子日本代表が練習に取り入れている。

 VR用の映像は、実際の対戦が予想される投手の投球モーションやボールの軌跡の分析結果を三次元に再現したCG映像にする。打者はHMDを装着し、そこで再生される映像を通じてライバル投手の投球を仮想体験できるのである。三次元空間では360度の球場映像が出現し、打席に入った感覚になる。そこへ正面のマウンドに立つ投手が投げ込み、実戦さながらの臨場感溢(あふ)れる〝勝負〟ができるのだ。

 「こうしてVRで学習量を積み、脳への負荷をかけて潜在脳を鍛えて慣れる。慣れることで余計な不安も払拭(ふっしよく)しメンタル面にも好影響をもたらす」と柏野氏は語る。

 意外にも、ボクシングや卓球のトップ選手の動体視力が高いとは限らないという。「モンスター」の異名をとるボクシングの井上尚弥は対戦相手を研究する際、こうなってああなってここはこうして・・・と、あらかじめ綿密にシミュレーションし、綿密に相手を見極め、いかに多くの定石を身体に覚えさせるか。リング上で潜在脳が働き、自然な動きとなって相手をマットに沈めてきたというのだ。卓球にしても、一打一打いちいち考えながら打ったり拾ったりしていては反応しきれるものではなく、鍛え上げられた潜在脳が数手先まで読みながら身体を動かしている。

 VR技術は卓球やボクシング、eスポーツにまで応用できる。短期決戦でも初めての相手ではないように戦える技術が開発され続けている。

現在発売中のWedge3月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「AI値付け」の罠  ダイナミックプライシング最前線
Part 1  需給に応じて価格を変動 AIは顧客心理を読み解けるか
Part 2      価格のバロメーター機能を損なえば市場経済の「自殺行為」になりかねない
Column   ビッグデータ大国の中国で企業が価格変動に過敏な理由
Part 3    「泥沼化する価格競争から抜け出す 「高くても売れる」ブランド戦略
Part 4     データに基づく価格変動が社会の非効率を解消する

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2020年3月号より

関連記事

新着記事

»もっと見る