2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2012年5月25日

 それには、ODAによる援助も1つの手段だが、昨今絶対金額が縮減の方向にあるなかで、援助ばかりに期待するのは難しい。

 政府間での会議にしても、中国も06年から首脳級政府間会議を始め、韓国やロシアも閣僚級の政府間会議を開始した。ここも、もはや日本の独壇場ではないのだ。そこで重要なのは、民間資本による島嶼地域への支援スキームだ。

 もともと開発がそこまで進んでいるわけでもなく、経済規模や人口も小さいこの地域で事業をするのは、少ない元手で効果を期待できる、企業にとってもコスト・パフォーマンスの高い案件ともいえる。

民間協力こそが日本の持ち味

 事業を実行するためには、民間企業の経営トップと、太平洋島嶼国の首脳が直接顔を合わせる場が必要である。経営トップは島嶼地域の可能性を発見でき、島嶼国首脳も、そうした機会を設ける日本に対して感謝するはずだ。しかし、過去5回の島サミットで、こうした機会は一度も作られないままであった。

 今回の島サミットの前日24日には、私が代表理事を務め、国連経済社会理事会特別協議資格を有するアライアンス・フォーラム財団と、外務省、日本貿易振興機構(経済産業省)が共同で、AFDP太平洋島嶼国首脳・経済人会議(AFDP会議)を初めて開催することとなった。日本を代表する民間企業トップ、そして島嶼国の首脳が一堂に会するインパクトは非常に大きい。

 では実際にどういった民間資本による展開が考えられるのか。

 本誌1月号のアフリカのケースでも述べたように、現代版帝国主義ともいえる中国型の国家資本主義的な開発も、なんでも民営化して株主利益の最大化を最高の目的とする英米型の株主資本主義的開発も、島嶼国の未来を築くことはない。やがて国民の貧富の差は拡大し、不安定な社会が生まれる。それらとは違う新しい開発スキームを示すことでこそ、日本は現地でプレゼンスを高めることができる。

 自動車部品のワイヤーハーネスで世界トップクラスのシェアを誇る矢崎総業は、すでに90年代から島嶼国の1つサモアに進出している。同工場では、現地従業員を約800名雇用する。人口18万人で、製造業が少ないサモアにおいて、同社の工場は同国政府・経済界からも感謝されている。現地従業員は真面目で勤労意欲も高い。単に労働コストなどの理由で進出するのではなく、雇用や信用を重視した日本企業らしいアプローチで現地経済に貢献している。同社を見習って、多くの日本企業がこの地域のチャンスに気づいてくれることを願っている。

 さらにこれからの時代には、DEFTA bracNet(デフタ・ブラックネット)モデルが参考になる。05年に世界最貧国の1つのバングラデシュで、日米の民間資本が営利を目的とした通信事業会社を現地NGOと合弁で設立した。上がった利益を、NGOを通じて教育、医療などの公益に還元する「民間による新しい途上国支援のスキーム」を創り上げたのだ。いろいろな産業分野でこのスキームを日本企業が率先し欧米も誘って太平洋で応用すれば、まさに公益資本主義の時代へと発展していく。


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