インド経済を読む

2020年3月31日

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野瀬大樹 (のせ・ひろき)

公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務・法定監査業務・内部統制構築業務などに関わったのちに独立し、野瀬公認会計士事務所を設立。インドのニューデリーに、日本企業のインド進出を支援するNAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、代表に就任。日本インドの双方より、日系企業へのコンサルティング業務を行っている。近著に『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)がある。

[著書]

経済の不振を、コロナ対策で取り戻そうとするモディ政権

 正直、この3月24日の「21日間のロックダウン」の通達が出た時点でインドのコロナウィルス感染者数は約300人程度。人口13億の国であることを考えても、また本通達が「4時間後から適用」となった点を考えても、あまりに急で強硬な対応のように感じられたのは事実だ。

 モディは何度も全国民向けの声明をテレビで発表し、テレビ番組は急に連日コロナウィルス対策の特集ばかり。いつからか、電話をかけてもまず20秒程度のコロナウィルス対策の啓蒙自動音声が強制的に入るくらいだ。州によっては感染者が出た家の入口に「感染者がいます」と張り紙し、訪問をしないように呼び掛けている。日本だと人権問題にかかわりそうな話だが、とにかくその動きや対策は徹底している。

 それはなぜか。

 一つは、他国の例を見てだろう。

 日本も韓国もそして欧州も、当初はこの新型肺炎を甘く見ていた節がある。それが感染拡大を招いてしまった点は否めないだろう。インドはこの失敗の轍を踏まないように、素早くそして妥協なく批判を恐れずに動いているのだ。この点はもっと評価されるべきだと思う。

 二つ目がインド特有の事情だ。

 インドの人口は13億で日本の約10倍だが、面積は日本の約9倍、つまり人口密度は日本よりも高い。都市部には日本を超えるほどの通勤ラッシュがある。そして人と人との距離が近く、皆大声でまるで喧嘩のように話し合う。パーティやお祭りなどで集まるのを好む。衛生状態も良くない。靴は履いたまま入る家が多い。食事は手で食べる。

 これらを考えると、インドは一度感染に火が付いたら、止められないほど拡大する可能性がある。インド政府も他国の例を見ながらその点を警戒している。

 さらに、未だに教育を十分受けられない人が多くいる点、及び多くの公用語があるためその啓蒙や通達も全国に浸透しにくい。

 先述の全国民向けのモディの演説でも非常に印象的だったのが、比較的理解する人が多いヒンディー語でゆっくり、かみくだいて、本当に子どもでも分かる形で終止語っていた点だ。日本と異なり教育水準も言語も情報へのアクセスもバラバラなインドという国では、政府の指示や通達が末端まで浸透するのに非常に時間がかかる。そういったインドの特徴をモディもよく分かっているのだろう。

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