2024年12月23日(月)

インド経済を読む

2020年3月31日

26日、調理用のガスを入手するためにタンクを持って並ぶ人々@ムンバイ(AP/AFLO)

 経済そのもののニュースではないにしろ、この件には触れないわけにはいかないほどの大きな事件がインドにおいて発生した。世界を覆うコロナウィルスに対する対抗措置である。

 当初2月の時点でのインド政府の対応は特定の国からの渡航者には問診票と検温が実施されている程度で非常に緩かったのだが、3月3日に首都デリーで初の陽性患者が出たあとのインド政府の動きは日本とは対照的に非常に迅速だった。

 まず3月3日に即日日本や韓国など特定国に発行しているビザの無効化を発表。これは「もうすでにインドにいる人は対象外」となったため、私などは助かったのだが、運悪く日本などに出張・一時帰国していた人はインドに戻れなくなってしまった。

 3月12日には「すべて」の国のビザを無効化(外交官ビザや就労ビザは除く)。そして3月22日には全土での「外出禁止令」。そして22日の夜の発表で、3月31日までの全ての店・会社の閉鎖、不要不急の外出禁止を決定、さらに24日にはその期間を4月14日まで延長することが発表された。

 実に1カ月近くの間、13億の人口を抱える巨大国家インドはいわゆる「ロックダウン」状態となった。食品店薬局を除きすべての店・会社がクローズし、町から人が消え、まるで戒厳令下を彷彿とさせる状態が今現在も続いている。

 実際私も食料品を買うために徒歩で近くの野菜屋まで歩いていたのだが、巡回している警察に職務質問され「どこに住んでいるのか」「何をしに外出しているか」などをしつこく聞き込みされた。オフィスに仕事で使う書類がおきっぱなしになっているのだが、それを取りに行くことも難しいような状況だ。メイドもドライバーも来なくなったので、家の掃除もスーパーまでの移動もできない。さらには新聞まで止まってしまったので、情報もテレビやネットに頼らざるを得ない。

 日本人社会では特に3月24日に発表された4月14日までのロックダウン延長の声明は衝撃だったらしい。あまりに急な発表の上、外国からの飛行機の着陸も禁止されたので「もうしばらく間インドに閉じ込められるのでは?」との懸念が広がったのだ。インドの医療体制、特に感染症対策の充実した施設は日本よりも数段階劣るため、皆「どうせ感染するなら環境の良い日本で」との認識が広がり、半ば夜逃げのような形でわずかの荷物とともに帰国した人も少なくない。

 JALやANAの尽力でなんとか数便の日本向けの便は飛ばせたものの、仕事やビザの都合上現地に残ることになった日本人達はまだ不安な日々を自宅で過ごしている。 


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