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2020年4月2日

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中澤幸介 (なかざわ・こうすけ)

リスク対策.com編集長、新建新聞社常務取締役

リスク対策.com主筆、新建新聞社取締役。熊本地震への対応に係る検証アドバイザーを務めた。

 昨年末に、中国武漢市でおかしな感染症が発生しているとのニュースが飛び込んできてから3カ月が経つ。この間、新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、各国で想像を絶する厳しい感染防止策が取られている。

(長田洋平/アフロ)

 こうした感染症は今に始まった話ではなく、2003年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年にはH1N1新型インフルエンザ、そして2012年にはMERS(中東呼吸器症候群)が発生し、その都度、世界を震撼させてきた。そして、こうした未知の感染症が起きても企業が事業活動を続けられるようにと、2009年には厚生労働省が「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」を策定し、感染症を想定したBCPの策定を呼び掛けてきた。では、各企業はどれだけ備えていたのか、そして今後どこまで対応できるのか? 

 危機管理の専門メディアであるリスク対策.comは、新型コロナウイルスへの企業の対応状況を明らかにするため、2020年1月~3月まで計3回にわたり、緊急アンケート調査を実施した。その結果、国内感染の広がりを追うように、対策が強化されている様子が顕著に表われた。

アンケートの実施期間と有効回答数
●第1回調査1月27日~31日 355
●第2回調査2月17日~21日 385
●第3回調査3月9日~13日 376

 下図は、感染予防において最も基本的な対策となる①「手洗い・手指の消毒」、②「マスク着用・咳エチケット」、そして③「従業員や家族への正しい予防策の教育」の3項目について、どの程度徹底して実施されているのか、第1回から第3回までの調査結果を比較したものだ。①~③の各項目において、調査を重ねるごとに、赤い部分「徹底して実施している」の割合が大きく伸びていることが分かる。国内の感染状況が高まれば、基本となる予防策を徹底するのは当然と思われるかもしれない。しかし、逆の言い方をすれば、最も基本的な感染予防策すらも、当初は徹底されていなかったということだ。

 

 実際、回答者の多くは感染予防の計画を策定していなかったことも分かった。今回の感染拡大を受け、今、あわてて策定しているというのが実情だろう。

 今では大企業を中心に、多くの企業がBCP(事業継続計画)を策定している。本アンケートでもBCPを策定していないとの回答はわずか5.7%で、継続的にBCPの見直しを行っているとの回答が50%を上回った。しかし、感染症計画については真逆だ。非定期的あるいは定期的に計画を見直していると回答したのは30%に満たない。

 
 

じわりと広がる感染症への業務継続は?

 日本の企業が主に地震だけを想定してBCPを策定していることについては、過去に幾度となく指摘されてきたことだが、本来、BCPは地震のためだけに作る計画ではない。事故や災害など不測の事態に見舞われても、自社にとって重要な業務を継続できるようにしておくための計画である。「重要な業務」とは、社会的に不可欠な製品やサービスを提供している企業なら、それに関わる業務が該当するし、売上の大半を占めるような経営上不可欠な事業に関わる業務もある。それらを止めない、あるいは止まったとしても必要な時間内に再開させるようにさまざまな戦略を用意しておくのがBCPの醍醐味である。

 ただし、地震などの突発災害については、重要業務の選定を行い、それらの中断を防止し、できる限り早期の復旧を図ることがBCPの方針とされるのに対し、感染症のように、じわりじわりと影響が広がる場合は若干考え方が異なる。後者では重要業務を選定したとしても、それを行う上で、従業員らが感染するリスクが伴う。それでも、自らの企業が継続しなければならない業務の社会的必要性、経営維持・存続のために収入を確保する必要性などを勘案して継続すべき業務の選定を行い、そのための稼働レベルなどを決めなければならない。

 大切な視点は、業務の優先度の低いものから縮小、停止していき、継続させるべき重要な業務のために人員を集中させていくという発想だ。そのためには、どのような状況になったら何の業務を縮小・中断するのか、継続すべき業務は何かをあらかじめ決めておくことが必要になる。

 参考までに、2009年に厚生労働省がまとめた「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」では、地域や業種等によって40%以上欠勤する可能性があることも想定しておくことを推奨している。

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