2022年8月13日(土)

Wedge REPORT

2020年4月2日

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中澤幸介 (なかざわ・こうすけ)

リスク対策.com編集長、新建新聞社常務取締役

リスク対策.com主筆、新建新聞社取締役。熊本地震への対応に係る検証アドバイザーを務めた。

重要業務の選定が行われていない

 さて、第1回~第3回のアンケートで一貫して聞いたのが、現在の対策レベルだ。アンケートでは、①従業員対策、②業務面での対策、③事業所の対策、④体制面の対策、⑤感染者が発生した際の対応面での対策、⑥教育・訓練の6段階に分けてそれぞれ質問した。

 質問の方法は、1つ1つの対策について、1.特に何も考えていない、2.実施したいが現時点では未実施、3.実施しているが徹底できていない、4.徹底して実施しているの4段階での評価をしてもらった。

 以下のグラフは、質問項目すべての対策レベルについて、第2回と第3回の結果を比較したものだ。

 

 ①従業員対策については、第3回の調査結果だけを見ると、かなり実施率が高まっている。しかし、基本的な対策ですら当初徹底されていなかったことは、冒頭でふれた通りである。出勤前の体温測定は今も徹底されている状況とは言えない。在宅勤務・テレワークへの切り替えは、製造業では難しい状況にあることは理解できるが、時差出勤についてもようやく4段階中の3の実施率(点数に置き換えるなら75点)で高いとは言えない。

 ②業務面の対策については、イベント・セミナーの開催や参加の自粛、国内外への出張は第2回調査に比べ第3回調査時点では飛躍的に実施率が高まった。それでも、社内外での対面での打ち合わせの自粛・禁止が徹底できていないことは、社員同士の接触は問題ないと考えているのか、あるいはマスク着用などを条件とすることで許可していることなどが想定される。

 ③事業所の対策では、備蓄や消毒はよく実施されているが、入館者のスクリーニングや来客の自粛はまだ実施率が低い。おそらく社内で一人でも感染者が発生すれば、状況は一変するはずだ。

 ④体制面の対策は第1回調査から全体に実施率が高い。おそらく他の災害でも基本的な体制は変わらないため、もともとよくできていたと思われる分野だ。

 全体に実施率が低い項目は、⑤感染者が発生した際の対応面での対策、⑥教育・訓練である。これらに共通することは、感染者が発生することを前提として取り組まなくてはいけない対策ということ。感染症対策としてのBCPは、感染予防策と、社内でも感染が拡大して働ける従業員が少なくなった状態での計画の両面を備えておかなくてはいけない。感染症に限らず、地震や風水害など、あらゆる災害についても予防策と、その予防策が破られた後の対応策を考えておくことは危機管理の基本である。

 ただし、予防策が破られた後のことまでイメージして備えることは楽ではない。なぜなら災害による被害を正しく予測するなどということは誰にもできないからだ。だからこそ、継続的にさまざまなシチュエーションを想定して訓練を行い、計画を見直すことが不可欠になる。その訓練の実施率が第1回~第3回のいずれの時点においても極めて低かったことは日本の企業全体の課題である。

 今回のパンデミックが長期戦になることは、3月27日に安倍首相からも改めて示された通り、ほぼ間違いないだろう。一方で、近年自然災害が起きなかった年などないことも考えておく必要がある。今後感染がさらに拡大し、大半の従業員が在宅勤務を余儀なくされる中で、大災害が起きたら、誰がどう安否を確認し(入院中や療養中の社員も含めて)、どう感染予防を徹底しながら対策本部を立ち上げ被災社員の支援にあたるのか。顧客や取引先も在宅勤務の状況の中でどう被害状況を確認し対応にあたるのか。企業の危機管理はまだ始まったばかりであることを肝に銘じておきたい。

  
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