もちろんハーバードの学生であっても官庁や公的機関、安定した大企業に入って出世したいと考える学生も多い。だが、大学を包む空気を私なりに解釈すると、学生たちは何か自分でやって(できれば金を稼いで)やろう、という進取の気性が強いような気がする。
大学院生も同じことがいえる。これはひとえに、ハーバードが入学者を選抜するにあたり、成績以外にもユニークな活動歴や際だった才能、個人のバックグラウンドなどを考慮して時間をかけて入学者を選考するからではないかと思う。自由な発想を持った多くの人たちが入学して生き生きと活動するからこそ、自然とユニークなビジネスが生まれる可能性も高くなってゆくのだろう。
こうした雰囲気は、もともとは西海岸、大学でいえばスタンフォードなどが持っていた気風だったのかもしれない。ただ常に大学改革を考えているハーバードは、学生の間の起業志向の高まりや、これに対する大学としての支援の重要性をにらんで2011年11月に「イノベーション・ラボ」という新しい研究所を発足させた。若い起業家が交流し、いろいろなアイデアをぶつけ合い、新しい出会いやビジネスチャンスを生み出すことを狙っている。
熱狂を持って迎えられるザッカーバーグ氏
ハーバードはザッカーバーグ氏などの成功に刺激を受け、こうしたラボを作ったのだが、ザッカーバーグ氏がハーバードを訪れた際にファウスト学長からラボ立ち上げの話を聞かされたところ「ぜひ見てみたい」といって、大学側が考えた当初の予定をほとんどキャンセルして急きょ訪問し、居合わせた学生たちをびっくりさせたそうだ。その場の雰囲気についてファウスト学長は「エルビス・プレスリーが建物の中にいるような興奮状態だった」と語っている。かつての問題児がハーバードに大きな影響を与えているのだ。
自身の会社を上場し、巨万の富を得て、大学時代から長くつきあったガールフレンドとも結婚し、人生最高の時を迎えているともいえるザッカーバーグ氏。ただ株式上場後はフェイスブックの株価は軟調な展開が続いており、市場では「大型上場への期待が大きすぎたのではないか」といった厳しい指摘も出始めている。今後どのような新たなアイデアを生み出し、ビジネスを拡大してゆくのか。市場のみならず、多くのハーバード関係者も若き企業家の手腕に注目している。
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