立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年4月13日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

日本企業のテレワークが普及しない、その原因とは?

 職業柄、リモートワークに向いていることもあって、私は昨年からすでに仕事の一部をWebセミナーやWeb会議・相談に切り替え始めた。コロナ危機の到来を予見したわけでもなく、時代のトレンドとして遠隔ビジネスがいずれ主流化することだけは感知していたからだ。とはいえ、やはり人間は会って話すのが便利で、どうもリモートワークの取り組みがそれほど早く進まなかった。今年も相変わらず、月例出張のスケジュールを組んだ。

 年明けてみると、2月初中旬の出張から状況が一変した。まずは武漢の封鎖をみて、急遽上海出張をキャンセルしたが、これに続くベトナム出張はスムーズだったし、日本出張も名古屋で某企業グループの幹部社員500名が集まった講演会で登壇し、問題なくこなした。しかし、2月下旬からは状況が悪化しはじめた。

 3月に入ると、それまで平和だったベトナムやマレーシアも陥落の様相を呈した。続いてWHOのパンデミック宣言。私の仕事の内容も変わった。顧客企業のテレワーク体制の確立に提案しなければならなくなった。

 製造業現場を除いて、普通のオフィスワークなら、「ハンコを押すために出社する」というようなパターンは論外として、従来の業務を従来の目線で見れば、多少なりとも会社に出向く必要が見出されるだろう。「テレワークのできる仕事」から選別し、テレワークを進めていくのではなくて、「どうしても出社しないとできない仕事」とは何か、そこから始める必要がある。

 こんな状況においても、日本のテレワーク普及率がまだ低い。パーソル総合研究所は3月23日、新型コロナウイルスで全国の正規社員の13.2%がテレワークを実施したとする調査結果を発表した。1割強という率は低すぎる。私が住んでいるマレーシアでは、「テレワーク」や「リモートワーク」といった用語すらほとんど聞かれない。多くの会社は当り前のように「在宅勤務」に切り替えていた。

 日本ではテレワークがなかなか普及しない。年長従業員、特に幹部の間にIT機器を使いこなせない人が多いという事情があるかもしれないが、根本的な原因ではないと思う。テレワークにおいて、海外と日本の普及率の差、その本質的な原因とは何であろうか。

 企業組織でいえば、海外企業の場合、一般的にヒトと職務の結びつきであるのに対して、日本企業はヒトとヒトの結びつきである。言い換えれば、前者が「職務型組織」であって、後者は「共同体型組織」である。テレワークという遠隔性は職務指向であり、共同体への破壊作用をもっているから、日本企業に敬遠されるのである。

 コロナショックによって、今後「非接触型社会」がより勢力を強めていくだろう。組織のなかでも、「努力」という属人的・対人型の評価基準が、職務的・対事型に変わっていかざるを得ない。そうした意味で、テレワークがまさに一種のトリガーになるだろう。

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