立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年4月13日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 
消毒剤を散布するクアラルンプールの消防士(REUTERS/AFLO)

 手錠を掛けられ、マレーシア警察に連行された写真付きと実名出しで現地で報道された――。日本人容疑者(81歳、年金生活者)は4月3日、ノル・イッツァティ・ザカリア判事の前で通訳によって訴状を読み上げられた。クアンタンの公園で野鳥の写真を撮影するために外出した同容疑者は、新型コロナウイルス感染防止の行動制限令(MCO)に違反したとして、裁判所から1000リンギットの罰金(または3カ月の禁固刑)を科せられた(4月3日付、マレーシア英字紙ザ・スター 『MCO: Japanese man fined RM1k for leaving house to photograph birds』)。

民意に支えられる本物のロックダウン

 勝手に外出すれば、警察に逮捕され、罰金や刑務所行き(または併科)である。そのほかにも複数の日本人が街でジョギングしたことで逮捕されていた。街だけでなく、今はコンドミニアム敷地内の散歩やジョギングも禁止されている。生活必需品の買い出しは一家に1人だけ外出が許されるが、自動車は運転手1人以外に同乗は許可されない。各地では警察が厳しく検問や取締りを行っている。

 今の日本では考えられないマレーシアのロックダウン(都市封鎖)は本物だ。現地在住の私も不本意ながら自宅隔離の生活を「満喫」している。いや、不本意とはいえない。むしろ個人的にはこのような厳格なロックダウンに賛同している。

 情況が明らかに改善しているからだ。マレーシアのR0(基本再生産数)は3月18日付で発効した行動制限令発令前の3.55から、4月10日現在の0.9に落ちた(4月11日付けマレーシア華字紙南洋商報)。R0<1の場合、感染症は終息していくといわれているが、マレーシア保健省は4月10日、感染を最大限に断ち切るために最低でも6週間のロックダウンが必要とし、ムヒディン首相に2度目の延長を提言し、首相が再延長を決断した。

 現地での民意調査によれば、8割以上の国民がロックダウンの実施や延長に賛成している。日本で騒がれている「私権制限」を持ち出して抗議する声はほとんど聞かれない。ビジネスに熱心な華人でも商売よりはまず命第一、命を落としたら一巻の終わり、生き残りさえすれば、いくらでも後からビジネスができると考えているようだ。

 要するに、疫病退治とビジネス・経済の優先順位をはっきりさせている。このことについては基本的に政治家や国民のコンセンサスが取れている。より早くビジネスを再開し、経済の復興に取り組むためにも、まずは思い切った措置でコロナの拡散を食い止めなければならないと。

 私たち在住外国人も大変厳しい状態に直面している。出入国に関しては、一般のマレーシア人は出国禁止となっているが、外国人は出国できる。ただ、いったん出国すれば、マレーシアへの再入国ができなくなる。

 3月18日行動制限令の発効当日、私はベトナム出張を予定していたが、当然キャンセルになった。さらに行動制限令の延長に伴い、4月以降の出張などの海外渡航は次から次へとキャンセルせざるを得なくなった。現状をみる限り、長期戦の様相が濃厚である。私の場合は、年内の渡航・出張予定をすべてキャンセルする前提で仕事の日程を組み直した。

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