2024年11月21日(木)

ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」

2020年4月21日

お知らせ:本連載をまとめた書籍『外食もお酒もやめたくない人の「せめてこれだけ」食事術』(佐藤達夫 著)が発売中です!詳細はこちら
(Alter_photo / iStock / Getty Images Plus)

「エビデンス」は法廷から医療現場に

新型コロナウイルスの脅威は収まる気配がない。こういうときには、例によって、アヤシゲな情報が巷に氾濫する。「この食品は新型コロナウイルスに効くというエビデンスがあります」などというガセ情報が次々に飛び出してくる。

このところ「エビデンス」という言葉をよく見聞きするようになった。筆者は昔、アメリカ映画の法廷場面で、弁護士や検事や判事が「エビデンス」という台詞をいっていたように記憶している。基本的には「物的証拠」という意味であったように思う。それ以外では、ほとんど聞いたことがなかった。

しかし最近では、ビジネスパーソンの間でも
「A社(ライバル社)の新製品、バカ売れらしいな」
「その話、エビデンスあるの?」
などと気軽に使われていると聞く。

「食」あるいは「健康」業界でも、10年ほど前からだろうか、「エビデンス」という言葉が頻繁に使われるようになった。筆者が最初にエビデンスという言葉を耳にしたのは、さらにその10年ほど前、医学用語としてのエビデンス=EBMだった。Evidence Based Medicine、訳すと、根拠に基づく医療。

「根拠に基づく医療? そんなこと当たり前じゃないの?」と強く思ったことが印象に残っている。人の生命を預かる医療が根拠に基づかないことなんてあるの? じゃいったい、それ以前は何に基づいていたの? それは主として経験や体験。ベテラン医師や師匠に当たる医師が、それまで積み上げてきた経験を、あとに続く医療関係者たちが参考にし、見習ってきた。

それはそれで意味のあることではあるが、世界中には自分の師匠だけではなく、優秀な医者が大勢いる。グローバルに情報が行き来するようになると、「経験に学ぶ」のではなく「データに学ぶ」ほうがより適切な医療ができると考えられるようになってきた。それがEBM。

「食」に関するエビデンスは素人が扱える

それから10年くらい遅れて栄養学の分野にもエビデンスが持ち込まれた。それがEBN=Evidence Based Nutrition=根拠に基づく栄養学だ。「データに学ぶ」という点で、EBMとEBNは同じ考え方に基づくのだが、両者の間にはかなり大きな違いがある。

これはあくまでも筆者の見解だが、EBMつまり医療のほうはその実践者が専門家(医師や看護師や薬剤師や管理栄養士等々)なのに対し、EBNつまり栄養学のほうは専門家だけではなく一般市民も実践することになる、という違いが生じている。いま、一般市民「も」と書いたが、現実的には実践者は一般市民「に」多い。


新着記事

»もっと見る