「市場を作りたい」
花原社長は、阪神大震災の被害を目の当たりに見て地震に強い家作りの評判があった大手の住宅メーカーの大和ハウス工業に入社。優秀な営業マンだったが、8年半前に横浜の分譲住宅営業所に転勤になり、土地造成から住宅販売までを経験した。しかし、5年前に父親が亡くなったのがそれまでの生き方を見直すきっかけになり、不動産で小回りの利くことを思い切ってやってみようと、既存の会社を基に「NIKKEI MARKS」という会社を16年10月に創業した。
当初は土地を安く仕入れて販売したり、マンションを購入してリノベーションして販売していたが、売上が増えて実需が付いてきたので、20年先を見越して次の一手を考えたという。「スキマスペースの活用を目的としたバイクパーキング事業、中国・韓国・シンガポールへの日本の不動産販売を行うインバウンド事業、そして人が亡くなった不動産の流通を図ることを目的とした『事故物件総合取扱いサイト』の運営という3本柱を動かそうと考えた。もらい手が見つからない不動産が、もらい手が見つかるのが『成仏』になると思いこの名前を付けた」と話す。
そこで昨年の4月に「事故物件総合取扱いサイト 成仏不動産」をスタートして、これまでに32件の取引が成立したという。現在は約200件の物件を掲載し、その内訳は、賃貸が6~7割で、残りが売却。地域的には全国で取り扱っているが、関東地区が圧倒的だという。最近はメディアに紹介されたこともあって、サイトに物件を掲載したいという依頼が増えたそうだ。
「4月からは物件を掲載するプラットフォームを新しくして、
不透明な取引条件
「事故物件」の定義は、殺人から自殺、孤独死、火事などいくつかあり、不動産仲介業者は顧客にその内容を告知する義務がある。しかし「事故物件」の定義を巡ってはグレーな部分が多く、それが原因で、売買、貸し借りの双方で精神的負担になることがあり、裁判沙汰になることもあるという。
例えば、安くて良い物件だと思って問い合わせると「事故物件」だったという情報のミスマッチ。そもそも何年前の事件発生から「事故物件」に該当するのかも決まっていない。このため、国土交通省は今年2月から「不動産取引における心理的に関する検討会」を開催、どういう場合に「事故物件」に該当し、売主は買主に、貸主は借主に説明する義務があるのかなどについてガイドラインを決めようとしている。
花原社長は「これまでひと括りであった『事故物件』を精神的な負担に応じて、4月から7つの区分に分ける新基準を設けることにした。『事故物件』とは言っても、人によって許容範囲が異なるので、最も負担の重い殺人から、自殺、火事、発見までに72時間以上の孤独死・病死、同72時間以内の孤独死・病死、共用部分での事故、墓場や火葬場が見えるーの7分類にすることで、選べるようにしたい」と話す。