2023年1月30日(月)

前向きに読み解く経済の裏側

2020年5月11日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

資金流出で通貨危機が発生

 新興国から資金が出て行くということは、ドル高現地通貨安になるという事です。上記のように、新興国は先進国から受け入れたドルを設備機械の輸入に使ってしまっていて、国内にドルがないからです。

 外国人投資家が新興国の株式を売却した代金をドルに替えて持ち帰るかもしれません。外国の銀行から返済を求められた新興国の企業がドルを買って返済するかもしれません。

 そうなると、新興国の投資家も「ドルが値上がりするだろうからドルを買おう」と考えるかもしれません。そうなると、一層のドル高が進むことになるわけです。

 悲惨なのはドルを借りている企業です。最初に返済を求められた企業は普通にドルを買って返済するので問題ありませんが、その企業のドル買いによってドルが値上がりするので、次に返済する企業の負担は重くなります。その企業のドル買いがさらにドルを値上がりさせるので、後から返済する企業の負担が加速度的に重くなっていくわけです。

 それを知っているから、上記のように先進国の銀行は先進国の借り手よりも新興国の借り手に対して強い返済要請を行うので、一層事態が悪化して行くわけですね。

ドル高抑制の金融引き締めが一層経済を悪化させる

 ドル高自国通貨安は、輸入物価を高騰させてインフレを招くため、中央銀行は金融引き締めを行います。それだけではありません。ドル高により借り手の破産が増えないように、ドル高抑制のための利上げも行うわけです。

 「先進国の投資家の皆さん、ドルを売って我が国の通貨を買って我が国の銀行に預金すれば、高い金利が受け取れますよ」という宣伝をするわけですね。

 それだけではありません。自国民に対して「ドル高を予想してドルを買っている皆さん、そんな事をしなくても自国の銀行に預金するだけで高い金利がもらえるのだから、ドルを買うのをやめましょう」という宣伝もするわけです。

 それによりドル高は止まるかもしれませんが、国内企業のほとんどが自国通貨を借りていることを考えると、景気への打撃は極めて大きなものとなりかねない、というわけですね。

 ちなみに、「ドルが高くならないように固定相場制を採用すれば良い」と考える読者がいるかもしれませんが、それは無理な相談です。固定相場制というのは、「ドルを買いたい人は申し出れば政府がドルを売ってあげる」という制度なのですが、政府が持っているドルよりもドルを買いたい人の注文が多ければ、制度が守れないからです。

 本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係ありません。また本稿は、厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承下さい。

  
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