前向きに読み解く経済の裏側

2020年4月13日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 銀行は意地悪で貸し渋りをするわけではなく自己資本比率規制があるので止むを得ず貸し渋るのだ、と塚崎公義氏は説きます。

新型コロナの影響で世界経済が深刻な不況に突入しています。金融危機を心配する人も増えて来たようなので、金融危機について数回のシリーズで考えてみたいと思います。今回は第3回で「銀行の貸し渋り」についてです。

(Irina_Strelnikova/gettyimages)

 本稿は、あくまでもリスクシナリオとして金融危機を論じるものであり、決してメインシナリオとして金融危機を予想して読者を不安に陥れようというものではありません。過度な懸念は不要ですので、落ち着いてお読みいただければ幸いです。

銀行には自己資本比率規制あり

 銀行には、自己資本比率規制という規制がかかっています。別名BIS規制と呼ばれているように、国際機関であるBISが定めているものであり、日本だけでなく主要国の主要な銀行はほとんどこの規制を受けています。

 国際業務を行なっていない銀行には国際的な規制はかかりませんが、日本を含めて多くの国が、国際業務を行っていない銀行にも何らかの類似の規制をかけているようです。

 自己資本比率規制の内容は複雑ですが、本稿では極めて大雑把に「銀行は自己資本の12.5倍までしか貸出をしてはならない」と記しておきましょう。厳密ではありませんが、事の本質は御理解いただけるはずです。

 この規制は、銀行の健全性を保ち、銀行が倒産しないようにすることで金融危機を防ごう、という趣旨です。貸出額の12.5分の1(=8%)が回収不能になっても銀行が債務超過にならず、倒産しないように、ということですね。

 しかし、皮肉なことに、金融危機の初期段階に於いてはこの規制が事態を悪化させかねないのです。

不良債権増加で自己資本が減ると規制にかかる

 借り手の状況が悪化し、銀行の不良債権が増えると、銀行が貸出の回収に失敗して損をしますから、銀行の自己資本が減ります。すると、銀行は減った自己資本の12.5倍までしか貸せませんから、既存の貸出を回収しなければならなくなります。

 通常、銀行の貸出は返済期日が決まっていますから、期日前に回収する事には借り手が抵抗するでしょうが、期日に回収して新たな貸出をしない、ということならば簡単です。

 じつは、そこが問題なのです。借り手の多くは、材料仕入資金を銀行から借り、材料を仕入れて製品を作って販売し、販売代金で借入を返済しますが、当然の前提として次の材料を仕入れる資金も借りて営業を続けるつもりでいるわけです。

 そんな時に「貸した金は予定通り返してね。次の材料仕入代金は貸せないから」と言われたら、借り手は苦境に立たされます。倒産してしまう借り手も多いことでしょう。これが貸し渋り、貸し剥がしと呼ばれるものです。

貸し渋りが景気を悪化させ不良債権を増やす

 銀行が貸し渋りをすると、上記のように倒産する借り手が出て来ますから、景気は悪化します。それだけではありません。

 銀行は新規の貸出にも消極的になりますから、「借金で自動車を買おう」「借金で工場を建てよう」と考えている人は諦めることになります。自動車や設備機械などが売れずに景気が悪くなる、ということになるわけです。

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