前向きに読み解く経済の裏側

2020年5月11日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 新型コロナによる世界的な不況が新興国の通貨危機を引き起こす可能性がある、と塚崎公義氏は心配しています。

 新型コロナの影響で世界経済が深刻な不況に突入しています。金融危機を心配する人も増えて来たようなので、金融危機について数回のシリーズで考えてみたいと思います。今回は第5回です。

 本稿は、あくまでもリスクシナリオとして金融危機を論じるものであり、決してメインシナリオとして金融危機を予想して読者を不安に陥れようというものではありません。過度な懸念は不要ですので、落ち着いてお読みいただければ幸いです。

(Ca-ssis/gettyimages)

問題のある新興国で通貨危機が起きるのは自然

 新興国への融資は、新興企業への融資と同様、様々なリスクを伴うので、貸し手は慎重になるのが普通です。特に多額の経常収支赤字が続いていて巨額の対外債務を抱えているような新興国に関しては、慎重になるはずです。

 もっとも、先進国で金融緩和が続いて金利が低下してくると、金利収入を求めて先進国の銀行(投資家を含む、以下同様)が新興国に押し寄せて来る場合があります。多くの銀行が新興国に資金を持参すれば、その新興国は資金繰りに困ることはありませんから、すべてが平和です。

 もっとも、ある時不安に思った銀行が資金を引き揚げ始めると、大変です。他の銀行も不安に思って資金を引き上げるようになり、通貨危機が発生します。このように、問題を抱えた新興国で通貨危機が発生するのは、ある程度自然な事だと言えるでしょう。

 問題は、健全な新興国でも通貨危機に見舞われる可能性がある、ということなのです。経済が順調に発展しているので、外国から資金を借りて設備投資を積極的に行っている新興国について考えてみましょう。経済成長に伴って株価も順調に上がり、先進国の投資資金も大量に流入している、というケースです。

先進国の事情で資金が流出する

 先進国で金融危機が発生し、銀行が貸し渋りをするかもしれません。そうなると、新興国に対しても融資の返済を求めて来るはずです。そしてそれは、先進国の借り手に対するよりも強い要請となりそうです。それは、後述のように新興国では通貨危機が発生する可能性が高いので、その前に回収しておこう、と考える銀行が多いからです。

 先進国で株価が暴落したとします。先進国の投資家は、不安になった銀行から返済を求められるでしょう。そうなると、持っている新興国の株を売却し、新興国通貨をドルに替えて持ち帰ることになるはずです。

 あるいは単に先進国でドル不足が発生するかも知れません。これはトイレットペーパーが不足したのと同じメカニズムによるもので、皆が足りなくなると思って大量に確保しようとするから本当に足りなくなる、ということですね。そうなると、新興国に融資や投資してある資金も引き揚げよう、という動きが先進国で強まるわけです。

関連記事

新着記事

»もっと見る