2022年12月10日(土)

中東を読み解く

2020年5月13日

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公務員天国、崩壊の予兆

 4月になってサウジ主導のOPECとロシアなど非加盟国の連合体「OPECプラス」が世界供給量の1割に当たる970万バレル(日量)の協調減産で合意した。だが、価格低迷は変わらず、遂にサウジは今回、歳出の大幅削減に追い込まれることになった。サウジの第1四半期の赤字は90億ドルに上っており、皇太子は国営石油会社サウジアラムコに対し、6月に100万バレルの追加減産を実施するよう命じたと伝えられている。

 こうした状況では、皇太子が脱石油を目指した「ビジョン2030」は大きな見直しを迫られよう。コロナ対応でサウジ自身、多くの経済活動が停止、ウイルス感染者に対する医療費などコロナ対策費も拡大している。イスラムが生まれた聖地メッカは封鎖されたままで、夜間外出禁止令も続いている。サウジの感染者は4万人弱、死者は約250人。7月末から始まる大巡礼(ハッジ)も実施が危ぶまれている。

 アラブ専門家の1人は「今回のコロナ危機はサウジの公務員天国が崩壊する予兆になるかもしれない」と警告している。同国が石油という地代で食っているレンティア国家であることはすでに述べたが、国民の約3分の2はいわば公務員。しかし、働かなくても食えた時代は変わるだろう。歳出削減で生活費手当が停止になったように、「今後は彼らがコストカットの標的になる」(専門家)。

 サウジは若年層が国の過半数を占めるが、地元メディアなどによると、こうした若者は安定を求めて公務員志向が強い。ムハンマド皇太子の改造計画は民間部門を強化することが狙いだが、若者たちが民間に背を向けていることも計画が進まない理由の1つだ。「いずれにせよ、早急にパンデミックが収束し、石油価格が回復しなければ、皇太子の改造計画は破綻状態になる」(同)。

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