世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年6月26日

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 6月2日、韓国は日本のフォトレジストなど3品目に対する対韓輸出規制強化措置につきWTO提訴手続き(昨年9月提訴)を再開すると発表した。ただし、韓国のホワイトリストからの除外措置はその対象となっていない。韓国側は、5月末までに満足のいく解決が日本からもたらされることを一方的に条件として設定していたが、それが日本からもたらされなかったことを理由に提訴手続きの再開に踏み切った。

Barks_japan/iStock / Getty Images Plus

 これについて、韓国の英字紙Korea Heraldの6月2日付け社説は、日本が韓国の輸出規制解除要求を無視したことを遺憾としつつ、日韓協力の必要性も強調している。社説は、ウイルスと米中対立による経済困難につき両国が協力すべき時に「過去に捕らわれていては一歩前に踏み出すことは不可能だ」、「ゆくゆく両国は経済共同体や経済同盟を築くことができる」等と主張する。文在寅政権に対し、過去の問題にとらわれていては今の難局を乗り切れないと注文を付けていると受け止められ、その限度においては評価できる。

 日韓経済共同体などのヴィジョン自体は健全なものと言ってよいが、当面実現の可能性がないことは明らかだ。両国間に信頼が欠如しているからだ。かつて李明博大統領は、公開の演説で日韓はワン・エコノミック・プレイスになるべきだと述べたことがあり、それは勇気づけられる発言だった。しかし、その李明博も政権後半には対日強硬に転じ、竹島を訪問した。文在寅政権は戦後の日韓関係(正常化条約等)をきちっと理解し、尊重することから始めないことには信頼は築けない。今の状況を最も心配しているのは財界関係者等であろう。上記社説は「ゆくゆく両国は経済共同体や経済同盟を築くことができる。韓国経済(世界10位)と日本経済(世界3位)の統合は、2億人近い消費者を持つ共同市場になる。それは両国企業が競争力を強化し、第3国でのビジネス・チャンスを確保することを助けるだろう」と言うが、そこには、そうした人々の不安感が滲んでいるように思える。

 WTO紛争手続きを再開するといっても行方は不透明だ。パネル設置に進んでも決定には2年以上はかかるだろう。現在、上訴機関である上級委は機能不全に陥っている。米国が新規委員の指名を拒否しているため、目下1人の委員しかおらず上級委を組織化できないのである。更に、GATTの安保例外規定などを考慮すれば、韓国が勝てるかどうかも不透明ではないか。そもそも、こうした問題でWTOに負担をかける韓国の見識が問われるだろう。昨年7月の一般理事会では韓国代表団の言動が顰蹙を買った。

 韓国は、対抗措置として日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の再破棄を示唆しているが、そうなれば米韓関係に再び深刻な問題を引き起こすことは必至である。韓国は問題の所在を正確に理解し、日韓関係全体の中で解決を図ることを考えるべきだ。解決策は韓国側に見つけて貰う他ない。残念ながら日本側にできることはない。

 6月1日、大邱地裁浦項支部は、いわゆる「元徴用工問題」に関連する日本製鉄の資産売却のための公示送達の手続きを取った。これにより8月4日以降押収されている資産の売却の現金化を命令することができることになる。6月3日、茂木外相は康京和外務部長官に対して現金化されることになれば「深刻な状況を招く」と警告した。韓国側は、輸出規制措置を「韓国人元徴用工」に係る韓国最高裁の判決に対する報復と捉えている。こういうことでは、日韓関係が好転する見通しは立たない。

  
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