新世代が徳島で染めるジャパンブルー
BUAISOU
(2018年6月号)
ジーンズを、いつか取りあげたいと思っていた。そんな時に渋谷のセレクトショップで見つけたのが藍色のケン玉。染めたのは徳島県の「BUAISOU(ブアイソウ)」という若き藍染職人たちだ。彼らを訪ねて、徳島にも旅して来ました。
「メイドインニッポン漫遊録」で訪ねる場所は大抵そうなのだが、彼らのスタジオも田畑に囲まれたのどかな田舎町にある。なんと藍染作業を行う仕事場は、自分たちでリノベーションした古い牛舎だった小屋。いやぁ、これには驚きました。
今やここに世界中のファッションブランドやアーティストが訪ねてくるなど注目の的。最近ではジーンズ発祥の地サンフランシスコにある「リーバイス」の本社でワークショップを行い、「ユニクロ」とコラボして藍染柄のスポーツウェアも発売された。
BUAISOUとは、日本人で最初にジーンズを穿(は)いたと言われる白洲次郎の邸宅「武相荘」から名付けられた。取材時に「いつか自分たちでジーンズを作ってみたい」と夢を語ってくれましたが、ついに完成したんだそうだ。畑で天然の藍作りから始まり、染色から縫製まで1点1点手作りのメイドイン徳島のジーンズはお値段30万円! 穿いてみたいなぁ。
実はこの旅には、掲載時に書けなかった忘れられないエピソードがある。
取材後の夜は、その土地でしか味わえない〝スルドイお店〟を探すのが恒例になっている(こっちが楽しみだったりして)。この旅でも、ワレワレは徳島出身の俳優、故・大杉漣さんが行きつけだったというお好み焼き屋さんを見つけてさっそく向かった。事件はこの時に起こった。ホロ酔い気分で夜の徳島の街を歩いていた筆者は、カクンと足首をくじいてしまったのだ。
翌日の取材は、杖がなくては歩けないほど。ビニール傘を買って代用しようとしたら、なんとホテルの前にうってつけの棒が捨てられているではないか。そう、徳島は四国八十八カ所お遍路の出発点がある地。お遍路さんが置き忘れていった棒でありましょうか。ありがたや~。その棒をつきながら、もちろん、第1番札所の竺和山霊山寺(じくわさんりょうぜんじ)をお参りしました。
翌日すぐ外科で医者に診てもらったら、全治1カ月の重傷。その間はずっとギプス生活でジーンズも穿けませんでした。トホホ。
(写真=阿部吉泰)
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