田部康喜のTV読本

2020年7月3日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Korakoch Sookkerd / gettyimages)

 ノーベル生理学・医学賞の受賞者である、「京都大学iPS細胞研究所」所長の山中伸弥教授は、新型コロナウイルスの真相に迫ろうとしている「ジャーナリスト」である。

 ジャーナリストの原義は「日々記す人」である。山中教授は「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」の公式サイトを運営して、関係の論文や統計などを紹介している。

 「ウイルスは専門ではない」と山中教授は、メディアに登場するたびに繰り返し述べている。さらに、公式サイトでは「証拠(エビデンス)の強さによる情報分類」という項目に遷移できるようにしている。

 ジャーナリストは、ソクラテスがいう「無知の知」つまり自らが知らないことを前提としいて、テーマに関係する人々に対する問答によって、真理に迫る者である、と筆者は考えている。それは、証拠(エビデンス)を根気強く積み重ねる営為である。

 経済学者は、ジョン・ケネス・ガルブレイスを持ちだすまでのなく、現代でもジョセフ・E・スティングリッツやポール・クルーグマンら、メディアにコラムを掲載して、ジャーナリストといえる存在は多い。

 山中教授は、新型コロナウイルスによるパンデミックのなかで登場した、科学者の「ジャーナリスト」である。

 BS1スペシャル「山中伸弥が聞く 新型コロナ~3人の科学者+1人の医師との対話~」(6月11日)は、ジャーナリスト・山中伸弥がいま日本にいることは、新型ウイルスによる暗闇のなかで一筋の光である、と実感させる。「NHKオンデマンド」でいまなら無料公開されている。

 番組の収録は、5月13日。質問はすべて山中が用意した。リモートによって、インタビューに答えたのは、次の4人である。

 免疫学者の宮坂昌之(大阪大学名誉教授)

 新型コロナウイルス患者の治療にあっている、大曲貴夫(国立国際医療研究センター国際感染症センター長)

 世界で初めてインフルエンザウイルスを人工的に作り出した、河岡義裕(東京大学医科学研究所教授)

 ウイルス感染症の歴史に詳しい、朝長啓造(京都大学ウイルス・再生医科学研究所教授)

山中 新型コロナウイルスはほとんどの人が感染しない。ところが、急に悪化して重症になる人もいる。肺炎の悪化なのか、多臓器不全なのか。

大曲 肺炎が全面に出てきて、肝臓などの細胞に症状が進んでいくのは事実だ。

山中 免疫機能が暴走する「サイトカイン・ストーム」が重症化の原因ともいわれている。

宮坂 サイトカインは、免疫細胞が炎症に対して、仲間を活性化する情報を送る物質。これが大量にできて、嵐のように血管などを攻撃しだす。身体を守る仕組みが傷つける現象だ。冠動脈疾患などの炎症の持病があると、サイトカインはボヤのような炎症を火事にしてしまう。

山中 重症化する人と、そうならない人の違いはどこにあるのか。

大曲 素朴な印象論だが、体表のレベル、のどや鼻に症状が出た人は重症化しないようだ。味覚、嗅覚に症状が出た人は症状が軽い。

山中 鼻とのどの段階でとどまって、下気道や肺にまで症状がいかない免疫の準備ができている、ということでしょうか。

宮坂 免疫には、自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫の段階で、ウイルスを食い止めて、本丸の獲得免疫までいかない可能性はある。ダイヤモンド・プリンス号でも、ほとんどの乗船者はウイルスにさらされていたと思われるが、発症者は10人中8人だった。自然免疫が強ければ、獲得免疫を得る可能性は高いかもしれない。

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