2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2020年7月5日

カギはヨルダンのアブドラ国王

 理由の第2番目は、連立政権を組む「青と白」率いるガンツ副首相兼国防相が「新型コロナウイルス対策を優先すべきだ」などとして一方的な併合に反対していることだ。ネタニヤフ首相とガンツ氏は連立協議で、1年半ずつ首相を務めることに合意しており、汚職裁判中の首相の任期は21年の9月までだ。

 ガンツ氏は米国の和平提案の一括受け入れを主張。「西岸の30%の併合」だけに同意して、「パレスチナ国家樹立や入植地の凍結」は拒否するという“いいとこ取り”は認められないとの立場だ。しかも同氏は隣国ヨルダンのアブドラ国王が併合に同意することを条件に付けている。この国王の同意問題が3番目の理由だ。

 西岸は元々、1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領される前はヨルダン領だったが、その後ヨルダンがパレスチナ人のために領有権を放棄し、イスラエルとも国交を結んだ。しかし、国王は今回、米和平案やネタニヤフ首相の併合方針には強く反対、首相が電話を掛けても話すことを拒絶するなど関係が急激に悪化している。

 このため、国王を説得できなければ、ガンツ氏の条件を満たすのは難しく、首相が併合方針を推進すれば、連立政権が崩壊する恐れさえある。首相にとって頭が痛いのはこれだけではない。軍や治安関係の元指導者らが併合に反対している点だ。これが第4の理由だ。

 軍や治安関係者の見解は敵対国に囲まれているイスラエルにとって、首相とはいえ無視できないものだ。彼らの反対の理由は、併合により自治政府と対立してパレスチナ側の治安機関の協力がなくなれば、イスラエルの治安が一気に悪化するというものだ。イスラエル治安当局がパレスチナ内部の過激派をすべて監視することは不可能だからだ。


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