リビアの内戦はトルコが支援する暫定政府軍が首都トリポリに肉迫していたハフタル将軍(76)率いる反政府軍事組織「リビア国民軍」(LNA)に反撃、同市近郊のLNAの拠点を奪回する軍事的勝利を収めた。内戦の重大な転換点だ。LNAに加勢していたロシア人傭兵軍団は空路脱出した。この敗北後、ロシアが戦闘機を派遣したと報じられるなど代理戦争拡大の懸念が高まっている。
傭兵部隊、辛くも脱出
リビア東部のトブルクに拠点を置くハフタル将軍が攻勢に出始めたのは昨年4月。そこから内戦が一気に激化した。LNAは西方に向けて地中海沿岸を制圧し、今年1月には戦略的な要衝シルトを制圧、トリポリに迫った。こうした中、ロシアとトルコが主導していったんは停戦に合意、ベルリンで国際和平会議が開催された。
しかし、和平会議では外国勢力の介入抑制で一致したものの、当事者のハフタル将軍が和平交渉から事実上離脱し、春になって再びトリポリ攻撃が激化した。多い時では1日100発を超えるミサイルが市街地に撃ち込まれ、トルコ大使館やイタリア大使公邸近くにも着弾するまでにエスカレートした。
国連などによると、4月以降のLNAの攻撃で民間人ら約200人が犠牲になった。これに対し、シラージュ暫定政府軍はトルコの支援強化を受けて反転攻勢、LNAが制圧していたトリポリ周辺の7都市を奪回。5月に入って首都南方約150キロにある空軍基地アルワティヤを奪還した。同空軍基地はLNAが2014年以来拠点にしていた要所だ。
暫定政府軍の勝利に導いたのはトルコの力だ。トルコはドローン攻撃機、ミサイル、装甲車、レーダー妨害装置など大量の兵器を供与し、トルコ軍やトルコの配下にあるシリア人民兵を多数送り込んだ。LNA側はシリア人民兵の規模は7000人にも上るとしているが、民兵の人数や、彼らが実際に戦闘に参加したかは明らかではない。
とりわけ今回はトルコのドローン攻撃がLNA側に壊滅的な打撃を与えた。ドローンはアルワティヤ空軍基地の3つの格納庫を爆撃、ロシア製の近距離対空システム「パーンツィリー」2基のうち1基を破壊し、もう1基は暫定政府軍兵士らが勝利を誇示するため、トリポリ市内のパレードに登場した。この兵器は性能などを調査するためトルコに運ばれつつあると伝えられている。
同基地に駐屯していた民間警備会社「ワグネル」所属のロシア人傭兵軍団は辛くも空路脱出したという。国連の報告書によると、リビアにいる傭兵は1200人にも上るとされる。同社は事実上ロシア軍の別部隊と呼ばれており、代表のエフゲニー・プリゴジン氏はプーチン大統領と近い。アサド政権支援でシリアにも派遣されていることが分かっている。