チャイナ・ウォッチャーの視点

2020年7月9日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

イギリス系4大企業の国安法支持

 果せるかな6月に入るや、香港を拠点とするイギリス系4大企業――怡和洋行(Jardine)、匯豊(HSBC)、渣打(Chartered)銀行、キャセイ航空を経営する太古(Swire)集団――が、本国のボオリス・ジョンソン政権の方針に逆らい『文匯報』『大公報』で「香港版国家安全法支持」を表明した。

 勢いに乗ったというのか、梁振英は“過激”な考えをフェイスブックに次々に綴っている。

 6月30日には、「803基金」なる組織を立ち上げ、香港のみならず他地域であれ「香港版国家安全法」違反摘発への協力者に100万香港ドルを提供する方針を明らかにした。7月3日には、「イギリス海外市民旅券(BNO)を手にイギリスを後ろ盾にして、6年間イギリスに居住した後にイギリス国籍を取得した者に、香港が保護・特典を与える理由はない。国籍法を厳格に執行し、彼らの国籍と香港市民資格を剥奪せよ」と綴っている。これが、イギリスのボリス・ジョンソン首相による「中国政府が『香港版国家安全法』を施行し香港における反中運動の禁止に踏み切った場合、イギリスは移民規則を変更し数百万の香港住民に対し『英市民権を獲得する道』を開く方針であり、イギリスは香港との関係を維持『せざるを得ない』」(『ザ・タイムズ』6月3日)との発言を念頭に置いていることは間違いないだろう。

 「愛国商人」にしても香港拠点のイギリス系企業にしても、習近平政権や梁振英の“脅し”に屈してたとは思えない。ましてや新型コロナ禍や香港問題を起点に構築されつつある国際的な中国包囲網――より直截に言うなら習近平政権に対する国際的共同戦線――を軽視、あるいは無視したわけでもないだろう。やはり習近平政権を巡る内外情勢を天秤に掛けたと見るべきだ。

 米欧を軸にした中国包囲網に反するというハイ・リスクを冒しても余りあるハイ・リターンはあるのか。企業活動に関する門外漢には解けそうにない難題である。であればこそ、香港問題が独裁対民主化といった単純図式ではとらえ難い、いや見誤りかねないことを改めて指摘しておきたい。

  
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