WEDGE REPORT

2020年7月30日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

Q NIHでも新型コロナウイルス感染症の治療薬の研究などは行っているのか。

小林 NIHもエボラウイルスや新型インフルエンザ蔓延の時と同様に、新型コロナウイルスの治療、研究は行っている。ワクチンも企業と組んで開発している。私の働いているベゼスタキャンパスでも一時は数十人の感染者が出て3カ月ほどロックダウンの状態になっていた。NIHの中にある感染症アレルギー研究所(NIAID)のファウチ所長は、これまでも世界から情報を集め、その経験と科学的なデータに基づいて新型コロナによる対処法や死者の予測などを世界に向けて発信してきており、頼りがいのある人物だ。

 トランプ大統領には耳に痛いことも発言してきており、新型コロナの感染者が出始めた最初の段階で、十分な対処をしないでいると米国の死者が20万人になると警告していた。米国の状況はそれに近い状況になりつつあるように思える。

Q 医師としては、まだ新規感染者が多く出ている新型コロナへの対策と、死者の数では新型コロナよりはるかに多いがんの研究と、どちらを優先すべきか。

小林 半分近くのがんは治るようになってきたにもかかわらず、がんで亡くなる方は日本で年間約40万人、世界では1000万人もいる。この新型コロナのせいで、治療ができなくてがんにより亡くなった患者がたくさんいる。新型コロナ感染が急速に拡大した4、5月ごろはNIHを含めてこの地域のほとんどの病院が、急変などの救急を除くがん患者の受け入れを原則ストップしていた。しかし、これだけ多くの人が亡くなるがんは待ってくれない。これ以上、病院機能をストップし続けることはできないという事情がある。

 NIHでもがんの治療、研究を一時は中止していたが、既に再開している。NIHのあるメリーランド州(人口約600万人)の感染状況は、感染者7万5000人(一日約800人増加)、死亡者約3200人(7月14日時点)で、今でも東京よりもかなり悪いと思うが、それでも、6月から経済的な機能が再開し、病院はがん患者の受け入れを再開している。

 ということで、米国は社会の正常化に向けてかじを切ってきている。新型コロナで亡くなった患者は現状では数十万人であるのに対し、がんで亡くなるのは毎年約1000万人になるので、がん治療を止めることはできない。もちろん一時期のニューヨークのように対処がない状態で新型コロナが燃え盛っているような状況では、新型コロナの患者を優先すべき期間が必要かもしれないが。

  
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