「コロナ感染防止対策で政府から依頼を受けた医療用ガウンを製造できるメーカー数十社をわずか3日で構築したら、経済産業省の担当者からそのスピード感に驚かれた」と話すのは、技術やサービスをほしい企業にマッチングを使って提供する仲介ビジネスを展開しているリンカーズの前田佳宏社長(43歳)だ。
コロナ禍で中国のサプライチェーン(部品供給網)が寸断されて製造ラインの国内回帰が進むものの、どの企業がどういう技術を持っているかは見つけにくい。そういう状況下で、中小企業の埋もれていた優れたモノづくり技術やサービスをネット上に公開することで、ほしい企業にほしい技術を提供するマッチングの将来性に期待する前田社長に今後の展開を聞いた。
東日本大震災がきっかけ
社名の「つなぐ人」を意味する「リンカーズ」は、東日本大震災の直後の2012年にDisttyとして起業した。最初はビジネスがうまく展開しなかったが、つなぐことの重要性を痛感し、「マッチングで世界を変えるという」ビジョンの元に14年に現在の「リンカーズ」を立ち上げた。
前田社長は「日本全国の優良な中堅中小ベンチャー企業をコーディネーターが介在し、最適なマッチングサービスを行うことで、新たなハブ企業“スーパージャパン1000社”の育成をして、輸出を増やし、日本のGDPを拡大するのがわが社のミッションだ」と話す。その理由は、日本の優秀な技術、特に中小中堅企業が磨いてきたモノづくり関連の技術が、使われずに消滅しようとしている点だ。
災害の多い日本では、数年前からBCP(事業継続性)の重要性が指摘されてきた。しかし、BCPを可能にする企業を見つけることは至難の業だった。同社のマッチングのサポートを受ければ、様々なニーズに対して対応可能な企業を短期間に見つけ出すことができる。技術のマッチングは、新規のビジネスを見つけるツールとしてだけでなく、災害や事故が発生した時の企業リスクの回避にも役立ちそうだ。
中小メーカー数万社をつなぐ
リンカーズが長年かけて構築した中小製造業のネットワークは数万社になる。地域の経済団体、商工会議所のアドバイザー、経営指導員など、地域の製造業をよく知るコーディネーター1200人が技術の「目利き役」となり、欲しい企業からのオファーに応えられるかを判断する。最終的には選ばれた企業同士が直接やりとりして、取引するかどうかを決める。
展示会が不要になる
中堅・中小企業の多くは、各地で開催される展示会を活用して新規の顧客の開拓を進めてきた。しかし、コロナ禍によりすべての展示会開催が中止か延期されてしてしまい、企業の多くが新規顧客を見つけられなくなっている。そこに目を付けたリンカーズは、ネット上に展示会と同じように企業ごとにどのような技術、サービスが提供できるかをDX(デジタルトランスフォーメーション)化した。ものづくり技術プラットフォームだ。検索のよって、ほしい技術、提供したい技術を絞り込んで最適な探索を可能にする仕掛けになっている。
この最新技術検索サイト「TechMesse(テックメッセ)」を6月10日にリリースした。これを使えば、異業種からもほしい技術を獲得することができ、高いブース代を支払って展示会に出品する必要性がなくなるシステムだ。リンカーズでは当初は無料で企業の導入してもらい、将来的には、月額登録料にて課金モデルにするという。