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2020年6月26日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

地方銀行をつなぐ

前田 佳宏(まえだ・よしひろ)2000年に大阪大学工学部を卒業、同年4月に京セラに入社、06年に野村総合研究所に移り、マーケティング戦略立案などを担当。12年にDistty(現リンカーズ)を創業、社長。第14回日本イノベーター大賞優秀賞、第1回ニッポン事業構想大賞」大賞受賞。福井県出身。43歳。

 リンカーズは地元企業との関係が深い地方銀行との連携にも着目している。既に山口フィナンシャルサービスなど十数行と連携し、4月にはいくつかの地銀に出資をして関係を強化しているSBIホールディングスとも資本業務提携した。同社は地銀が持っている取引先企業の技術情報をネット上に紹介することで、新しい取引が生まれるとみている。現在の前田社長の目標は「太平洋ベルト地帯にあるすべての地銀と連携を結んで、関東から九州までのすべての企業を地銀の広域連携ネットワークで結ぶこと」だそうだ。

 地銀と取引のある中堅・中小企業に対して、新しい取引先の開拓、新しい材料の調達先をリンカーズのネットワークを通じて仲介すれば、コロナ禍で苦しんでいる企業は営業活動をしなくても新たなビジネスを始めることができる。

 地銀のとっては、取引先企業の得意とする技術を全国に紹介することができ、これにより取引先企業の売り上げが伸びれば、融資の増額にもつながり、地銀、企業ともに「ウィン・ウィン」の関係になる。

柔軟なサプライチェーンを構築

 これまで技術のマッチングは、クチコミによるものや、たまたま技術者同士の出会いによるものなど偶発的なものが多く、効率的なマッチングシステムは存在しなかった。リンカーズは、これまで築いてきた多様なネットワークを最大限に活用することで、こうしたマッチングを実現することができるという。コロナ禍で対面による営業活動が制約されているいまこそ、その優位性が発揮されようとしている。

 このシステムの優れている点は、参加企業が多いため、企業が社内事情により仮に予定通りの納品ができなくなっても、短期間に同様の商品を作れる企業をネット上で見つけ出し、補填できる点だ。リンカーズがメーカーをまとめ上げた月産100万着の医療用ガウンを生産する体制作りはその典型で、これだけ多くの企業が参加していれば、仮に1、2社が抜けたとしてもほかの企業がカバーすることで、支障なく生産できる。前田社長は「地域間連携、業界間連携をこれまで以上に推進し、生産効率を最大限に高める必要がある」と指摘、人工呼吸器など他の医療物資についても、サプライチェーンの構築支援に取り組むとしている。

 このネットワークは海外にも広げたい考えで、実現すればネット上で新たなサプライチェーンを構築することも可能になるわけで、ビジネスの可能性は大きく広がる。これまでのサプライチェーンは地震や水害などの災害やコロナ禍など不測の事態が発生すると、すぐに寸断されることが多かった。これからのサプライチェーンは、仮に作れない部品があっても、いかに短期間に柔軟に部品網を修復できるかが重要になってくる。

 より多くの企業が参加できるリンカーズのシステムを使えば、一つのサプライチェーンが崩壊しても別のチェーンで回すこともできるため、企業の生産ライン停止のリスクも軽減できる。

  
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