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2020年6月29日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 今月末にかけて3月期決算上場企業の株主総会がピークを迎えているが、今年の株主総会はコロナ危機の影響で、例年とは大きく様変わりした。大きな会場を使っての開催が激減して、新型コロナウイルスへの感染予防のため小さなスペース会場での開催と、ネットを活用したオンライン総会に参加する方式が主流となった。そうした中で、オンライン総会の課題も見えてきた。来年以降の株主総会のあるべき姿を考えてみた。

ソフトバンクグループ株主総会(写真、同社提供)

7月にずれ込む

 3月期決算の企業は本来6月末までに株主総会を開催するのが通例となっていた。しかし今年は世界的に拡大したコロナ禍の影響で、日立製作所のようにグローバル展開している企業では、海外の子会社が感染拡大により閉鎖になり、決算手続きの遅れなどにより業績数字の集約ができなくなった企業もあるようで、日立は7月以降に株主総会を延期するようだ。このほか、東芝、凸版印刷、日本板硝子、オリンパスなど数十社は、同様の理由などから同月以降に延期するとみられる。

 3月期決算企業は、3月末時点の株主が、議決権と配当を受け取る権利を得ることになっているため、総会は基準日から3カ月以内に開催する必要があり、7月に遅らせると基準日も移さなければならなくなる。その結果、3月期末の株主が、その後に売却すると配当を受け取れなくなる。この配当問題を避けるため、総会を2回に分けて開く方法もある。6月に総会を開いた上で、決算報告などを改めて後日決議する「継続会」を開く。東証によると、「継続会」の開催を検討している企業は85社程度あるようだ。

質問できない議事進行

 コロナ禍を受けて今年の株主総会で主流となったネットを使えば、株主は自宅や外出先からも参加することが可能で、上場会社は総会のための大量の紙の資料作りをしなくよくなり、会場設定の費用を節約できるなど利点がある。必要なことは、会社側の説明だけでなく、1年に一度の機会なので株主からの質問や経営方針について活発な議論を行うべきだ。できることなら十分な時間を確保して、幅広い視点からの対話をするのが望ましい。課題となるのはパソコンなどの操作が苦手な高齢の個人株主に対して、いかにして気軽に参加できる機会を提供するかだ。

 経済産業省は4月に感染防止を防ぐための株主総会の運営についてのガイドラインやQ&Aなどを公表し、トラブルが起きないよう上場会社に十分な準備をするよう呼び掛けた。それによると、防止策の一環として株主に来場を控えるよう入場制限を求めることや、株主の来場がない場合でも総会を認めるとしている。その際には事前に書面やネットを使って議決権行使を認めるなどして、決議の成立に必要な要件を満たすことができる。

 同省が公表した「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」によると、「参加型」と「出席型」の2つあり、「参加型」は事前に議決権を行使して、遠隔地にいる株主が来場したくてもできない場合に用いられるもので、総会当日に「動議」や「質問」はできない。「出席型」は、インターネットの端末を整備して、会場出席者と同じ設備を設けるもので、株主総会に出席したものとみなす。

 しかし、今年は多くの総会では、「参加型」「出席型」のどちらも「動議」や「質問」をすることは認められなかったようで、次回からはこの取り扱いをどうするかが重要課題になる。また回線の障害が起きて、ネット参加者との意思疎通がうまく行かなかった場合の対応も必要になる。

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