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2020年6月29日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

少ないネットで質問受ける企業

 ネット形式の株主総会を先行的に導入したのはソフトバンクグループだ。2002年からはネットを使って議決権行使の仕組みを導入しているが、20年度はインターネットの出席者が総会会場に出席しなくても、株主として会社側が提案した議案に対して賛否の投票ができるようになった。同グループは6月25日にリアルとネットで株主総会を開催、孫正義会長兼社長が議長を務めた。同社はネット参加者からの質問も受け付けた。

 また伊藤忠商事は6月19日に取締役だけが出席したリアルの株主総会を開催した。個人株主の総会への参加は自粛を求めたが、どうしても参加したい株主がいたため別途、オンライン総会の場所を設け、質問も受け付けた。

 5月22日に株主総会を開催した流通大手のイオンは、多数の株主が出席すると集団感染のリスクあるため、千葉市にある本社ビル内の多目的ホールに設けた総会会場と並行して、総会の模様をネットでライブ中継した。例年は2000名近くの株主が来場するが、今年は約80人の株主が会場に出席、そのほかは約2500人の株主がネットで視聴した。事前にネット参加者から質問を受け付けて会場で答える形を取り、1時間半ほどで総会はトラブルもなく終了したという。ネット参加者からの当日の質問受け付けなかった。

 リアルの総会の場合は室内のため、顔も分かるため誰がどんな質問するかはある程度予想できる。しかし、オンラインの場合は、どんな株主が何について質問するか全く予想がつかない。それだけに質問に答える側にとっては覚悟がいる。総会の事務方にとっては想定外の質問が飛び出して、議事進行が乱れることを懸念する。しかし、そうしたリスクを受け止めて答弁するだけの度量があってこそ、企業のトップたる器の証明にもなる。上場企業は真正面から取り組んでもらいたい。

重要な個人株主の多様な意見

 見てきたように、今年の株主総会はコロナ禍の下での開催となったため、異例の形式となったが専門家はどうみているのか、楽天証券の窪田真之チーフ・ストラテジストに聞いた。

 「株主総会はかねてから多くの資料を配布するため大量の紙を使い、時間の制約のある中で行われるため、今の時代にはネットを使えば時間を短縮できて、合理的に開催できると思っていた。しかし、ネットの総会の参加者が、質問もできずにただ画面を見つめて聞いているだけというのは、個人株主の意見が総会に十分反映されず、個人株主を軽視していることになり問題がある。

 会社側がオンライン株主総会を利用する形で、多様な意見を持っている個人株主の声を封じ込むようなことになってはならない。議決権行使では一部の経営者が会社を私物化している事例なども報告されており、そういう意味からも、しがらみのない個人株主の意見がきちんと生かされるルールを確立するような議論がされるべきだ」と指摘、今年の総会の教訓を生かして、来年以降は個人株主の意見を十分に反映できる株主総会にすべきだと訴える。

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