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2020年8月1日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 米国大統領選挙の投票日まであと4カ月。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない米国。この4年間、「米国を偉大な国にする」という目標を掲げて政策を進めてきたトランプ大統領だが、現状では支持率で民主党のバイデン候補にリードを許している。米国経済の現状と先行きはどうなるのか、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト、ジェトロ・ニューヨーク事務所の権田直ディレクター、三井物産戦略研究所の山田良平・北米・中南米室長の3人から聞いた。

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―― 現在の米国の金融情勢と株価をどう見るか。

SMBC日興証券・丸山チーフマーケットエコノミスト 政策的には、未曽有の危機の下で財政政策と金融政策はフル稼働状態にあり、明確に株などのリスク資産を押し上げる方向に作用している。共和党と民主党との党派対立はあったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い急速に悪化する景気経済対策の一環として、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法などによる財政政策の対応は、日本を含む他国に比べれば迅速だった。金融政策は緩和方向が明確であり、政策金利を限界まで引き下げた後に資産買入と様々な経済主体に対する資金供給を実施している。

 株価に代表されるリスク資産価格の変動要因を現時点で整理すれば、感染動向、経済動向、政策動向、政治動向の4つと考えられる。感染動向は、パンデミックと位置づけることは時期尚早と思われるが、南部や西部の州を中心に感染第2波が広がっている。感染拡大は経済活動を抑制する可能性があり、リスク資産に対して明らかにネガティブだ。株価が6月上旬まで上昇した後に多少の調整局面に転じ背景の一つは感染者数の増加と判断できる。

―― 株価の先行き見通しは。

丸山氏 経済動向は、北東部の州において感染が抑制されていることもあり、6月と7月序盤に経済動向は大崩れに至ってはいない。株価は現在までのところ2番底を目指さず、もみ合っており、「感染拡大に対する懸念」と「事実としての景気拡大の継続」が拮抗している状況に見える。

 中央銀行は昨年の連邦準備制度理事会(FRB)による国民との対話を通じ、雇用拡大を重視する姿勢を強めており、少なくとも米国経済がコロナ禍前の水準に復するまで金融緩和を続けると考えられる。誤解を恐れずに言えば、中央銀行はバブル発生を甘受してでも雇用の回復を目指すスタンスにあると判断できる。従って、感染第2波とトランプ・ロスを超えた後は、政策動向に支えられ、株価は再び上昇基調をたどると予想する。

―― トランプ大統領が大統領選に敗れた場合に、マーケットに悪影響を与えて株価が急落する恐れはないか。

丸山氏 政治動向は、トランプ大統領の再選の可能性が明確に低下する下でリスク資産を押し下げる方向に作用している。米国のトップが、株価に優しいと一般的に考えられているトランプ大統領から、中立と考えられるバイデン前副大統領に交替する可能性が高まっているためだ。今後の政治動向からは、トランプ・ロスに伴う株価下落が一旦生じると思われる。しかし、バイデン前副大統領はあくまでもトランプ大統領との比較において株価に優しくないだけと位置づけられている。株価の下落を望む大統領は存在しない。トランプ・ロスが株価を長い間押し下げる可能性は低いと思われる。

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