WEDGE REPORT

2020年8月1日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

―― トランプ政権の4年間を総括すると。

三井物産戦略研究所・山田室長 就任直後から大統領令を発令し、100日間で選挙公約をつぎつぎと実行した。外交・通商では環太平洋経済連携協定(TPP)とパリ協定からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に取り組み、特に同盟国であるフランスやドイツなどEU諸国との関係に深い溝ができた。国内では、挫折したがオバマケアの撤廃、移民問題での強硬姿勢など公約には忠実だった。その半面、政権基盤は安定せず、解任や辞任に至った閣僚、補佐官などの政権幹部は15人を超える。また、政治任用ポストのうち2割弱は指名されないままだった。

―― 9月に行われる予定の先進国首脳会議(G7サミット)で中国包囲網を築こうとしているようだが。

山田氏 トランプ大統領は、この場で対中政策について参加国と何らかの一致を取り付けて、選挙戦の好材料にしたいのではないか。これまで米国第一主義のもと国際協調を軽視してきたトランプ政権が、選挙を控えて先進各国との協力関係に頼ろうとするのは何とも皮肉な構図である。

―― トランプ政権は石炭、鉄鋼産業を強くするというスローガンを掲げたがその成果はあったか。

山田氏 産業の復興と産業に従事する労働者の支持は分けて捉えるべきだろう。政権発足時から再選を意識して、公約で掲げた保護主義的な通商政策を実行したことにより労働者の支持は得られた。しかし産業の復興は別問題で、発電における石炭のシェアは減少を続け、鉄鋼において対中輸入は減少しても他国からの輸入は増えた。

―― 選挙戦の終盤に向けてのポイントは。

山田氏 大統領の2期目に向けての公約がまだ出てきておらず、公約をどう実施したかのアピールに専念している。通常では党大会までは政策論争が熱を帯びるのだが、今回は民主党側から政策提案が聞かれるのみだ。

 有権者が重視する問題として、これまでは経済や雇用への関心が高かったが、今回はコロナ禍、政府のリーダーシップ、人種問題などのウエイトが高いようだ。そうはいっても、投票日の前週に発表される予定の7ー9月期のGDP成長率が芳しくなければ、トランプ大統領にとっては不利になるだろう。

―― 7月8日にバイデン氏と左派のサンダース氏が共同政策を提言した狙いは。

山田氏 サンダース氏がタイトルに名を連ねていること自体が重要で、民主党内左派の支持を得て党大会に向けて結束を高めることが目的。挙がっている政策は左派色が強く、州政府や議会が所管するものが含まれており、必ずしも実現性は高くない。具体的数値も乏しいが、党内の結束を高めることを優先している。

【まるやま・よしまさ】 1995年に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行、2001年にみずほフィナンシャルグループ、05年にBNPパリバ証券、09年に伊藤忠商事、14年9月から現職。山形県出身。
【ごんだ・ただし】 2004年に内閣府に入り、GDP統計、経済財政白書、経済財政諮問会議の事務局業務などを担当、16年12月からジェトロに出向、調査リポートや企業への情報提供を担当。東京都出身。
【やまだ・りょうへい】1997年にジェトロに入会、ニューヨーク事務所で調査担当(2004~10年)、北米課長(14~15年)などを経て16年に三井物産戦略研究所入社、17年4月から現職。神奈川県出身。

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