米国や東南アジアを中心にサービスが一般化している自動車の「ライドシェア(相乗り)」。これから小型衛星の打ち上げ回数が増えていくロケットにおいても、このライドシェアが注目されている。
そんなサービスを提供するのが米シアトルに拠点を置くスペースフライト(Spaceflight)だ。重さ数トンにもなる大型衛星を運ぶロケットに数キロ~数百キロの複数の小型衛星を相乗りさせるというもので、衛星側にとって使い勝手よい。
例えば、主衛星である大型衛星がトラブルで打ち上げが延期になってしまうと小型衛星も次の打ち上げまで待つ必要がある。また、小型衛星側が開発の遅れで打ち上げを延期せざるを得ないということもある。
乗り逃しを減らす「フライトスイッチ」
そんなときに便利になるのがスペースフライトの「フライトスイッチ」サービスで、次に相乗りできるロケットを即座に紹介してくれる。2011年にサービスを開始して以降、29回の打ち上げで271基の衛星を宇宙に送り出している。このスペースフライトを今年6月、三井物産が買収した。
三井物産モビリティ第二本部輸送機械第四部長の武者智宏氏は「テスラのイーロンマスク氏が率いるSpace X(スペースX)など、新たなプレーヤーの動きが活発になってきたことを受けて、宇宙を次世代の事業にしたいという志を持った社内の〝宇宙への思いを持つ若者〟たちが集い、事業化を目指した」と話す。
実は三井物産では、1990年代にも宇宙事業を手掛けていたが、マネタイズが難しいということで、2000年をめどにいったん事業を休止していた。しかし、武者氏が話すように、Space Xや、アマゾンのジェフ・ベゾス氏率いるBlue Origin(ブルーオリジン)など、宇宙ビジネスに民間企業の参入が活発化するなかで、社内の有志が立ち上がったというわけだ。
最初の案件となったのが2018年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)によるISS関連の民間開放事業の受注で、ISSから重さ数キロ~50キロの超小型人工衛星をISSから放出するというものだ(初放出は21年2月予定)。
ここで出会ったのがスペースフライトだった。「政府、民間企業を問わず世界中のロケット打ち上げ事業者とのネットワークを構築していることに驚かされた」(武者氏)。