連続小説は、若手女優の登竜門である。平成に元号が変わる直前に生まれた堀北真希は、若手とはいえ、いまや堂々たる人気女優であり、過去のシリーズの女優とは比較にならない。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの青森から集団就職で、自動車修理工場で働く星野六子役で、古くさい言い回しではあるが「国民的スター」となったといえよう。
梅子と松岡を演じる堀北と高橋をみていると、大物女優が若手俳優を育てる、といった趣(おもむき)がある。ほめすぎだろうか。青年医師を演じる高橋が上手くスターである堀北を支えているといったほうがよいのかもしれない。
文藝春秋でのインタビュー
梅ちゃん先生「戦後の日本人」を語る――月刊文藝春秋6月号の堀北真希の聞き書きである。国民雑誌といわれた文藝春秋の中吊り広告に、若手女優の名前が躍ったのはいつ以来のことであろうか。国民的スター・堀北真希の面目躍如である。聞き書きは文藝春秋編集部によるから、女性誌や芸能誌とは一味違う彼女の実像が浮かび上がる。
「私はギリギリ昭和生まれで、誕生日の3カ月後に平成になりました。当たり前のように、部屋にお花を飾ったり、いい香りのするキャンドルを置いてみたり、ただ楽しむためだけのモノにお金をかけることができます。それはそれですごく幸せなことです」
「しかし、ゼロの状況から今の豊かな暮らしに至るまでに、当時の人たちがどれほど頑張ったか。それを忘れてはいけないなと思っています」
連続小説が、戦後にこだわってきたことの意義があらわれている。団塊の世代に次ぐ筆者にとって、戦後は遠い存在となろうとしている。物心ついたころには、高度経済成長にかけあがっていく時代であった。
戦後と重なる東日本大震災
「梅ちゃん先生」は、戦後の歴史について、ニュース映画の映像をつかって、ていねいに解説している。今回の第15週は、昭和30(1955)年が舞台である。朝鮮戦争後の好景気のなかで、人手不足が、梅子の隣家の部品製作所まで及んでいるのがわかる。
思えば、梅ちゃん先生は筆者の父母の世代の大正生まれである。梅子の父は明治生まれであろう。
連続小説は、祖父母、父母、子、そして、筆者の子どもの世代に戦後を追体験させる。それは、堀北真希の世代である。戦後を生きた人々が懐かしく観るばかりではなく、それらの人々に育てられた人々が、過去を思う瞬間を経験しているのであろう。