2022年8月8日(月)

WEDGE REPORT

2020年9月17日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

新首相のハラは「4島返還」?

 筆者はどうやら、辞めた人に対して厳しい批判を連ね過ぎたようだ。

 菅首相の「4島の帰属を問題を解決して」という9月14日の発言に話を戻すと、「4島返還」という従来の路線に立ち返る方針であるという印象以外にはないが、総裁選出直後の咄嗟の発言であり、十分な考慮もなく反射的に口をついて出た言葉であった可能性もあろう。

 交渉の実務責任者である茂木外相が「56年宣言を基礎に交渉継続」と強調したことでもある。今後、首相と外相との間で調整が行われ、安倍ープーチン合意を維持することが確認されれば、その時点で4島返還は潰えてしまうだろう。

 領土問題は、主権問題そのものであり、安易な妥協は国の存立を危うくする。返還実現が容易ではないからといって不当に占拠され続けてきた国後、択捉両島を放棄すれば、「不法でも居座りさえすれば日本はあきらめる」という誤ったメッセージを各国に与えることになる。尖閣、竹島問題においても、好ましくない影響をもたらし、わが国の立場を大きく損なう。

 新政権は今後、ロシア相手にきびしい領土交渉を余儀なくされるだろう。

 ここで日本が2島返還という譲歩を撤回して、4島返還要求に立ち返れば、正当な主張であるにもかかわらず、ロシアが反発、いっそうかたくなな姿勢をとる可能性がある。ロシアのメディアが菅氏の14日の発言を早速取りあげたが、強い警戒感の発露とも解釈できる。

 菅新首相は9月16日夜の首相就任会見で「ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築く」と述べ、プーチン大統領も早速、「建設的に協力する準備ができている」と応じた。〝麗しき友情関係の始まり〟ーというべきところだが、ロシアが、わが国固有の領土を強奪、75年間も返還に応じないことを考えれば、まさに噴飯ものというほかはない。

 盗人のような国との「安定的な関係」や「建設的な協力」などありえない。ロシアが奪ったものをひとつ残らず返して、はじめてそれが実現する。

 〝強面〟といわれる菅首相は、プーチン大統領と甘ったるい挨拶を交わすのではなく「4島返還」の従来方針に立ち返り、強く迫っていかなければならない。

 今の機会を逃したら、「国後」「択捉」は未来永劫に帰ってこないだろう。

  
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