WEDGE REPORT

2020年7月18日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

禁固刑を免れたロジャー・ストーン氏(REUTERS/AFLO)

 トランプ米大統領が、2016年の大統領選挙にからんで実刑判決を受けた側近を、刑務所入り寸前に放免した。

 麻薬犯罪などで服役中の模範囚などではなく、トランプ氏自身の当選のために選挙で違法行為を働いた人物の刑を免除するというのだから、野党民主党などはもちろん、氏の奇矯な言動に慣れているはずの国民からも非難が起きている。

 かつて、ウォーターゲート事件で辞職したニクソン大統領に対して、後任のフォード大統領が恩赦を与え、次の選挙で落選した。トランプ氏も秋の選挙で再選を目指しているが、今回の騒ぎがどんな結果をもたらすか。

トランプ氏「前の正副大統領こそ犯罪者」

 トランプ選挙チームの顧問だったロジャー・ストーン氏(67)は、2020年2月に偽証など7項目の罪で禁固40カ月の判決を受けた。7月14日にジョージア州の連邦刑務所に収監される予定だったが、直前の10日、トランプ氏が、合衆国憲法で大統領に与えられている恩赦、刑免除の権限、いわば〝伝家の宝刀〟を抜いた形で盟友を救った。

 トランプ大統領はツイッターで、「ロジャー・ストーンは違法な魔女狩りの標的にされた。犯罪者はむしろ反対勢力のほうで、オバマとバイデンが私の陣営にスパイ行為を働いた」と憤りをみせた。バイデン氏が秋の大統領選での対立候補であるとはいえ、前政権の正副大統領を「スパイ」呼ばわりするとは、大統領の発言とは到底思えない。

 ホワイトハウス報道官の声明も、「事実誤認、不公正な逮捕、起訴、裁判であったことを考慮した」と説明、ストーン氏を起訴したミュラー特別検察官を名指しで非難するなど、やはりホワイトハウスのコメントとは思えぬ激越な内容だった。

ロシア情報機関と接触

 ストーン氏の犯罪事実は5件の偽証、証人への恫喝と公務執行妨害がそれぞれ1件。いずれも、2016年の大統領選にロシアがハッキングによって干渉した疑惑にからむ。

 ロシアの情報機関員とひそかに接触していたにもかかわらず、2017年9月の下院情報特別委員会で証言を求められた際、この事実を否定。 ロシアのハッカーによってトランプ氏の対立候補、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官の選挙責任者から窃取されたメールが内部告発サイト、ウィキリークスで暴露された際、事前に内容を知っていたにもかかわらず、しらないと虚偽の証言をした。

 2018年4月、検察側の証人に対しては、「お前は裏切り者のスパイだ」などど口汚くののしる脅迫メールを送りつけている。 

  氏は2019年1月に連邦捜査局(FBI)に逮捕され、ロシア疑惑、トランプ氏の関与などを捜査していたミュラー特別検察官が起訴した。

関連記事

新着記事

»もっと見る