移民政策の4本柱
毛受さんは、移民政策の4本柱を次のように定義する。
①入国方針=例えばドイツでは、どのくらい市場にニーズがあるのか? 半年ごとに必要な人数を出している。学歴なども吟味しながら入れていく。つまり、国がどの分野に、どのくらいの人員を受け入れるのか管理するということだ。
②受け入れたあとの処遇=一時的な労働者として、使い捨てしない。欧米では語学教育に力を入れ移民の潜在力を引き出そうとしている。、日本では日本語教育や職業訓練などがないがしろにされてきた。
③日本人も意識を変える=人口減少していくなかで、外国人が増えることは消費者が増えることにもなる。つまり、市場が拡大するということだ。社会全体の動きとして、外国人を受け入れるという姿勢を発信していかないと、今のままでは外国人使い捨てのイメージによって高度技能者も増えていかない。
日本は、過労死がある、同質性が高いと、外国人に思われている。賃金も魅力的ではなくなってきているなかで、どういうプラスを発信できかが課題。
④どういう国を目指すのか? トップのメッセージ。我々だけでやっていくのは限界。世界に発信すべき。意識変革を促す。
これら外国人の受け入れの土台になるのが、外国人の権利や義務、日本語教育、生活支援を行うことを明記した「在留外国人基本法」だ。韓国や他の先進国でも少子高齢化が進み、より質の高い移民の受け入れ競争が始まっている。こうした中で「きちんとした受け入れ態勢を整えているということは、移民に対して重要なメッセージになり、日本の前向きな変化を世界に伝えることにもなる」と、毛受さんは言う。
例えば、2008年のリーマンショックの際には、多くの日系ブラジル人の人々が雇止めとなり、ブラジルに帰ることを余儀なくされた。
「これまで日本は、何かあれば帰国してもらうという手段をとってきました。しかし、外国人からすれば、飛行機もなく国に帰っても仕事はありません。このままでは、職のない不法滞在者が増えることになります。職業訓練など外国人のためのセイフティーネットの議論が必要です。『日本はいざとなったら、切り捨てる』というイメージだけは避けなければいけません。コロナ禍によって、外国人はそれでなくともインバウンド従事、非正規労働の割合が高く、失業者が今後一層増えることが予想されます。これに社会としてどう対応するかが課題です」
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