オトナの教養 週末の一冊

2020年9月18日

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(mirsad sarajlic/gettyimages)

 日本における外国人労働者は165万人(2019年)にのぼり、過去5年で約70万人も増えている。中でも大きく伸びているのが、技能実習生で19年末は約41.1万人(前年比25.2%増)となっている。技能実習制度は、外国人に日本で技能を習得してもらい母国に持ち帰るという技能移転を建前としているが、日本の多くの現場では、人手不足を充足するために使われ、急増しているという実態がある。

 しかし、コロナ禍によって、その人の流れがストップしてしまっている。出入国管理庁は、雇止めになった実習生に1年間限定で「特定活動」ビザを付与し、1年後に試験をパスすれば在留資格5年の特定技能1号ビザを習得することができる救済策を出した。

 実習制度に代表されるように、これまで民間任せで外国人労働者の受け入れが行われてきたが、人口減少の加速期に入った今、今後は政府が主体的に携わっていく必要がある。また、それは一時的な労働者ではなく、共に生活する居住者、「移民」として受け入れる態勢を整えなければならない。

 新宿区多文化共生まちづくり会議会長を務めるなど、外国人問題について様々な提言をしてきた日本国際交流センターの毛受敏浩さんは「コロナ禍のように渡航の自由が制限され、安価な労働者が簡単に手に入る状況が変わったことを考えれば、一時的な外国人労働者雇用ではなく、日本社会に貢献する人を選択的に、かつ定住を前提にした受け入れに変わらざるを得ない」と話す。

『移民が導く日本の未来 ポストコロナと人口激減時代の処方箋』(明石書店)

 毛受さんはこのほど、『移民が導く日本の未来 ポストコロナと人口激減時代の処方箋』(明石書店)を上梓した。今後の外国人の受け入れ方について聞いた。

 まず必要なのが日本語教育だ。韓国などでは、国費を投じて言語教育を行っているが、日本ではボランティアと一部の自治体に任されている状態だ。

 「政府が定住前提でやってこなかったことの表れです。移民ではなく、一時滞在者として外国人を扱ってきました。外国人の人々に、力を発揮してもらうには、やはり語学が必要です。言葉ができないと、より高い次元の仕事にステップアップすることができません。また、言葉ができるようになると、失業した際にも、職業訓練を受けることができます」

 語学教育に力を入れ、外国人労働者の受け入れについて政府が直接関与している韓国では、外国人からの人気が高いという。

 「韓国では、韓国人並みの給与が保証されていて、中間搾取がない、クリーンな制度が整えられています。問題が起これば、政府が介入します。日本は民間任せで、問題が起きても団体が対処することになります」

 冒頭にも述べた通り、日本では急速に技能実習生の受け入れが伸びている。コロナ禍でも露わになったように、特に地方においては、彼らの存在なくして産業が回らないという実態も顕在化している。しかし、これは逆に言えば、日本人が就きたがらないような、非効率で低賃金の仕事が温存されるということを意味する。

 「地方では技能実習生への依存が高まっています。これは、途上国の産業形態に近づいていることの表れでもあります。安い労働力としてデカセギ外国人を使い続ければ、将来性のない産業へと劣化していきます。地方にそんな産業を維持すれば、日本の若い人も、良い仕事を求めて別の地域を目指すことになるでしょう」

 政府も昨年から「特定技能」という新しい労働ビザを設けた。これによって、日本人並みの賃金が保証されることになり、移動の自由も認められるようになった。日本企業にとっては、技能実習生のほうが都合がよい存在であり、今後、特定技能が増えて行くのかどうかが注目される。

 「移動の自由があることは非常に重要なポイントです。移動の自由があれば、受け入れ企業もいつまでもブラックでいることはできません。一方で、そうこうしている間に、日本のイメージはどんどん悪くなっていきます。というのも、毎日のように技能実習生が、スマホを通じてSNSで情報を発信しているからです」

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