使えない上司・使えない部下

2020年10月26日

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 今回は、ハイサワーやハイサワーハイッピーなどお酒の割り材と、「ハイサワー缶チューハイ」を製造販売するメーカーの博水社(東京都目黒区)の田中秀子代表取締役社長を取材した。

 田中さんは1982年に入社し、社長である父のもと、製造や品質管理、海外(イタリアシチリア島)でのレモン果汁の買い付け、営業、経理、マネジメントなど経営全般に関わる。働きながら東京農業大学に通い、食品醸造や食品分析を学んだ。「ダイエットハイサワーレモン」「ハイサワーハイッピー レモンビアテイスト」「ハイサワー缶チューハイ」を開発し、ヒットに導く。創業80年の2008年に、肺がんとなった父(現 会長)の後を継ぎ、3代目社長に就任した。田中社長いわく「お母さんのような存在」として社員20人をリードする。

 田中さんにとって、「使えない上司、使えない部下」とは…。

(Softulka/gettyimages)

リモートで仕事をすると、思い込みは通用しない

田中秀子さん

 「使える、使えない」といった言葉は居酒屋さんで時々、耳にします。うちのハイサワーを置いていただくお店に行った時、会社員と思えるお客さんが「あいつは使えねぇんだよ…」と話していることがあります。部下のことを指しているのかもしれせんね。

 ある意味で健康的な愚痴のようなものではないでしょうか。一杯飲みながらのストレス発散。それに誰だって、自分より職位の上の人から「あいつは使えないな」と思われる時もあるかもしれませんよね…。ただ、うちの会社の場合は小さく家族経営規模なので誰かがその言葉を使いたくなったとしても、他が「まあまあまあまあ…」とたしなめる感じです。

 コロナウィルス感染拡大の影響で、4月から全社で在宅勤務を始めました。広報や総務、経理、営業など10数人が状況に応じて続けています。各自が自宅で仕事をするリモートにしたことでめちゃめちゃ、会社が変わったんです。

 つくづく感じたのは、仕事の指示。社員に指示をする私の側に、課題が多かったなとよくわかりました。正確に伝えることができていなかった。例えば、「彼女はわかってくれている」「この話は通じているよね」と思い込むこともよくない、と実感しました。リモートで仕事をすると、思い込みは通用しない。何をどのように伝えればいいのかと考えたうえで社員に指示をしないと、正確には伝わらないのです。

 リモートは、ある意味で過酷。例えば、オンラインを使うとそのやりとりが動画で記録ができる。メールの履歴も残ります。それらをたどると、指示をした私の問題がわかってしまう時がありました。今までは、リアルであることの弊害や甘えがあったのかもしれません。顔を合わせ向かい合う中で「伝わっているだろう」といった空気に浸ってしまってたことかもしれない。

 営業のあり方も変わりつつあります。営業担当者たちがスーパーなどにうちのハイサワーを説明するセールストーク練習をオンラインで試みたのです。営業のリハーサルのようなものです。その様子を他の担当者や私が画面を通じてみます。担当者全員が2分間程のプレゼンテーションで説明するのですが、これがなかなか難しい。考えや思いがこんなにも伝わらないのか、と皆がわかりあったのです。面と向かって話すことにいかに甘えていたのか。雑談をしたりして、その場の雰囲気でごまかしていたのかもしれません。ハイサワーを始めとした商品の知識がいかに曖昧であったか、いかに商品の本質を伝えることができていなかったか…。

 2分間プレゼンテーションには広報や総務、経理の社員もオンラインを通じて参加するようにしました。オンラインでは、それが可能ですね。担当者は社員たちの前で何度も繰り返し、それぞれの立場からの助言をもらう。やりとりを続けていくと、商品に対しての知識が明確になり、思い入れがますます強くなってきたように思います。たぶん、担当者はこれまで以上に自信を持つようになったからではないでしょうか。

 リモートは、使い方によっては社内外のいろんなものをよくできます。リモートをしなかったら、プレゼンテーション力をこんな具合に底上げすることはできなかっただろうと思うんです。私が社員に指示をする時にも、ある意味でムリ、ムダがなくなった気がします。皆の居場所は離れているのに親密度を増せたり、職場の風通しがよくなっているようにも感じます。

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