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2020年11月7日

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犯罪として扱うよりも健康問題として矯正を目指すべき

 今回のオレゴンの新しい法案は、少量の麻薬を所持して捕まった人はこれまでの軽犯罪扱いから犯罪ではない不品行となり、100ドルの罰金が課されるが、同時に依存症の有無を検査され、依存症の場合矯正施設への収容となる。また大量の麻薬所持、販売などは重犯罪から軽犯罪へと扱いが変わる。

 州の検察局などはこの法案の可決に否定的だったが、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏と妻のプリシラ氏が法案可決を目指す団体などに50万ドルを寄付するなど、有力者からの後押しも見られた。麻薬使用は犯罪として扱うよりも健康問題として矯正を目指すべき、という考えは着実に米国内に広がりつつある。

 また今回の選挙では、新たにニュージャージー、アリゾナ、モンタナ、サウスダコタの各州が大麻合法化に賛成票を投じた。これにより米国では15の州と首都ワシントンで大麻が合法となる。 

 大麻合法化を推進する団体は、今回の選挙により連邦政府に対し本格的に大麻を合法化する圧力になる、としている。隣国のカナダではすでに国として大麻合法化に踏み切っており、米国がそうなるのも時間の問題と言えるかもしれない。

 ただし米国が大麻、そしてストリート・ドラッグを非合法とはしない、という決断を行うのは、ひとつに自治体政府の経済的負担、二つ目には麻薬常用者の数の多さという背景がある。大麻合法化に踏み切った州では「大麻所持で逮捕される人は元々すべての麻薬所持による逮捕者全体の4−5割を占めており、取締にかかる費用、また刑務所に収監する費用がバカにならない」という理由を挙げている。ニューヨークのように、合法化はしないが大麻所持は罰金刑のみ、とする州もある。

 また、最初に大麻合法化に踏み切ったコロラド、オレゴンでは大麻に正規の課税を行うことで州の財政が潤った、という経緯があり、他州もそれを見て合法化のほうが合理的である、と考えるようになった。特にコロラドでは当初大麻目当ての他州からの観光客の誘致、大麻をアレンジした商品の売上などにより、学校建設や福祉の充実が見られた。

 今回のオレゴンの決定は、今後米国の麻薬問題に大きな一石を投じるものとなるだろう。麻薬は大都市部だけではなく、中西部などにも広がっており、麻薬所持や売買そのものだけではなく、麻薬取引を巡るいざこざなど、まさに犯罪の温床ともなっている。また「貧者のヒロイン」と呼ばれる鎮痛剤オピオイド依存症による自殺者の急増も社会問題化している。

 もちろん依存症の人々をすべて収容するだけの施設があるのか、その費用負担をどうするのか、など問題は多い。しかし麻薬問題を根絶するためには逮捕ではなく矯正、というのは正しい考え方だろう。この動きが今後全米に広がっていくのかにも注目が集まっている。

  
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